小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド 七

 七話 復讐の火種


 日が落ちたベインワットは暗かった。
 一日の仕事を終えた商人達はグレートブリッジの上にいない。代わりに物音一つしない暗闇の向こうに、グラムが居た。
 傍らの松明に顔を照らされ、その顔は考え事をしていた。
「私には家族も友達も地位も富みも・・・ ・・・。全てを失っているのに、何故ですか」
 海辺であった大柄な男、ヴァン。彼はグラムのことを知っているようであった。
 珍しく先輩であるフランが一緒に食事を取らないか、と聞いてきた。だが今は、愉快に話しながら食事の気分にはなれなかった。
 フランと別れたグラムは、ただ何もせず彼のことを考えていた。
 考えていると、唯一知っている男性の存在が頭をよぎったが体格も顔も違いすぎた。
 やはり、あの男の人違いであろうか。
「何を考えておられますか」
 不意に闇の向こうから若い男の声が聞えた。
 グラムはビクリと身体を震わせ、声が聞えた方向に眼を凝らした。
 そこには見慣れぬ鎧を着こなした若い風貌の兵が立っていた。
「ごきげんようお嬢さん。そして、さようなら」
 男はゆっくりと大斧を持ち上げた。
「私も何かと忙しいので、遊ぶつもりはありません」
 男は大斧を振り上げ跳躍し、グラムとの距離を瞬間的に縮めた。
 グラムは頭で考えるよりも早く左腕を動かすと、大斧と自分の間に盾を滑り込ませた。
 盾と斧はぶつかり合い。盾を伝って鈍い衝撃が全身を震撼させた。
 グラムは後ろに跳び、右手で刀を抜いて構えた。
「ネツァワルの兵ですか? そうであれば許します。でも違えば許しません」
「今更訊くのですか。敵か味方か問わずに飛び掛る者は敵ですよ。戦争と同じ様にね」
 男は話しながらゆっくりと足を動かす。グラムもそれに合わせてにじり足で下がった。
「中々用心深いお嬢さんですね。これでは間合いを詰められませんよ」
 男は言いながらもまた一歩近づき、グラムもまた下がった。
「しかしですね」
 男がグラムに進める歩が早くなる度に、グラムも素早く後退した。
 その距離は一向に縮まらない。しかし、永遠に逃げられるものでもない。
 グラムは大股で進む男に対して再び退いた。けれども後ずさりする背中が壁にぶつかり、動けない。
 グラムは心の中で自分の浅はかさに舌打ちした。
「ほら、もう逃げられない」
 男は最初の一撃と同じストライクスマッシュの構えを取った。
 グラムの方は盾を装備しているため、バッシュで迎撃できるものの。身体にエンダーペインをかけていない以上。失敗すれば敵のコンボで致命傷になりかねない。
「先ほど言うとおり、私はそんなに暇まではありません。私の任務を完遂するために人を探さなくてはいけません。では、終わりにしましょう」
 男は足を踏み込み、今にもグラムの懐に飛び込もうとしていた。
 ―――死ぬのですか、私。
 グラムは心の中で呟いた。
 ―――私が死んだら、私を失ったフランさんは悲しむかな、泣いてくれるかな。大佐はどうだろう、抱きしめてくるだろうから嫌だな。
 グラムは口元で少し笑った。
「余裕があるのですか」
 男は勘違いしたらしく、怪訝な顔をした。
 ―――でもベゼルさんはどうかな? 私が思うに不精面して立ってるだけかな。
 グラムは考えている内に、喧嘩したまま謝っていないベゼルの顔が思い出された。
「相手もこちらも国のためや、はたまた大切な何かの為に戦ってるんだ。同じ立場なのに哀れむ必要は在りもしない」
 ―――そう言っていたような気がする。
 自分もその中に入っているだろうか。それとも違うのか。もはや確認する事もできない。
 グラムは無言のまま涙した。
「どうやら怖気ついたようですね」
 男は勝ち誇った顔で大斧を振り上げ、飛び掛ってきた。
 その距離十五歩弱。
 ―――負けられない。
 グラムは盾を捨て、両手で剣を構えた。
 残り十歩。
「勝負さえ捨てたのですか。愚かですね」
 男は嘲け笑いながら、すぐ傍まで近づいてくる。
 グラムは再度、鞘に剣を収めた。
 顔には決意の色が見え、右手でそっと刀を掴んだ。
「私はもう何も失わない!」
 瞬間。男の眼前からグラムが消えた。
 代わりに男の身体から血が迸り、地面に崩れ落ちた。
「何が・・・、起こったの、ですか」
 男は手に滴る大量の血を見て、自分に深々と刻まれた傷を知った。
「か・・・、片手剣には、無い技です、ね。驚き、ました・・・ ・・・よ」
 男は言い終えると、身体に纏う全身の生気が消え去った。
 グラムは男を背に、刀を抑えたまま身を縮めていた。
「フーッ、フーッ」
 グラムの両眼は恐れと興奮で瞳孔が開き、息を荒げていた。
 鞘から覗く刃は血がこびり付き、グラムの勝利をせせ笑うように紅く煌めいていた。

 しばらくして、身体と心を落ち着かせたグラムは後ろを振り向いた。
 男は血溜りの中うつ伏せに横たわり、心臓は鼓動を止めていた。
 グラムは動かぬ人間の姿を見ても恐れない自分に恐怖し、身体を強張らせた。
 その後、男の鎧から覗く白い封筒に意識が向いた。
 男の話から密書であろう、と見当をつけたグラムは血で汚れぬよう慎重に封筒を抜き取った。
 一応確認のつもりか、グラムは封筒から綺麗に手紙を取り出した。
 ところが、内容を見始めたグラムの顔は豹変した。その顔の色は焦りと驚きに満ち。身体は凍りつく。
 そのまま陽が山頂の上から覗くまで、グラムは衝撃の余り、動く事ができなかった。
 

あとがき
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# by inuis31 | 2007-05-16 21:55 | 小説

復讐と鬣のロンド 六

 六話 涙の理由


「右翼防衛陣崩壊! 後方の部隊が敵を食い止めています」
「左翼の部隊が救援を求めています!」
「後方部隊を中心に向け、左翼部隊は敵を迎撃しつつ、中央と合流。意地でも、物資を守れ」
「ふぇ~ん」
「泣くな、グラム」
 大佐から文字通り特訓を身体に刻まれたグラムは訓練を終えていた。
 今はベゼルの代わりに隊を指揮するフランの傍で、ごく安全な任務を実行していたはずだった。
「中央前線崩壊! 敵、来ます」
「弓隊はスパイダーウェブ準備。ソーサラーは続けて、スパークフレア。後に、全軍撤退!」
 形勢は明らかにフラン達の不利に働いていた。
 海辺沿いを通る物資の輸送中、突然海から押し寄せた敵に奇襲を受けた。
 部隊が横殴りに押される中、隊形を整えたものの。徐々に陸地に後退していた。
 そして隊の前線は完全に崩壊し、残りの者は蜘蛛の子散すように逃げ出した。
 けれど、場所は大半をネツァワル国は所有するビクトリオン大陸。そのため逃げ帰る拠点には困らなかった。
 もちろん、普通の方向感覚ならばである。

 眼前には二種類の薄青い情景が水平線の向こうに伸びていた。
「海は広いですね~」
「・・・ ・・・それ以上言ったら、泣いてやる」
 陸地方向に逃げおおせたとばかり思っていたフランは、真逆の海辺にいた。
 あいかわらず天才的な方向音痴をおしみなく発揮している。
「海風の逆に行ったのに・・・ ・・・」
「あの、フランさん? ここは山から吹き降ろす風の方が強いんですよ?」
 的確な説明を受けるフランは「うー」とだけ唸って、何も言い返せなかった。
 幸いまだ追撃を続けているのか。敵兵の姿は見えず。その上、彼女達が隠れている場所は高い草が多く。遠目で見つけられることはまず無い。
「味方が近くにいれば、どうにかなるのに」
 フランはマフラーに顔を沈めて考え込み。隣のグラムは何やら思いついたらしく、隅でコソコソと動いていた。
 その一連の行動とは、乾いた草を集め、空気の通りが良いように積み上げる。最後に剣を振ってブレイズスラッシュを放ち、着火。
「フランさん! フランさん!!」
「何」
 振り返ったフランは当然、絶望的に驚いた。
「こうやって狼煙を上げればきっと味方が気付いてくれるはずです」
「この、天然少女!」
 フランはスカウトらしい素早い動きで焚き火を一蹴。
 だが飛んだ焚き火の一部が火種となり。草の群生に火が放たれた。
 それを見て、二人は慌てた。
「た、大変です!」
「逃げるしか、ない」
 二人は踵を返し、まだ燃えていない草むらから外に飛び出して難を逃れた。
 しかし、更なる一難が外で待っていた。
「火遊びは危険だな。小僧の相棒」
 茂みから脱出した二人を待っていたのは、相変わらず大柄と包帯の目立つヴァンであった。
「敵に居場所を教えるとは、とんでもない馬鹿者が紛れ込んでいるようだな」
 フランの後ろに隠れているグラムは申し訳なさそうに俯いた。
「そんな馬鹿を、見逃してくれたら嬉しいけど」
 フランは腰から短剣を抜き、構えた。けれども戦うつもりなど微塵も無い。なぜならば彼女は、一度ヴァンと戦って負けている。
 その理由を抜きにしても、戦うことにメリットなど無い。
「はいそうですか。などと言うと思うか、小娘」
「私の名は、フラン。小娘言うな。まるで私が未熟者みたいになる」
「みたいではなく、ただ事実を言っている。それに、小娘も俺の名を知らんだろう? 教えるつもりはないがな」
 一度名乗ったため、大佐はヴァンの名前を知っている。一方、居合わせたフランは気を失って名前など知る由もない。
 それは首都で休んでいるベゼルとて同じであった。
「貴方の名前なんて、興味ない」
 言うや否や、ヴァイドダークネスの技で視界を奪おうと接近した。
「奇襲に不意打ち、闇討ち、その他全ては通じない。卑劣な技で我は殺せぬ」
 ヴァンは人並みはずれた速度で鎌を回転させ、技を四散させた。
 そのまま反則級のスピードを乗せ、足元に落下した。
 落ちた鎌はフランを風圧で突き飛ばし、茂みの中に突き飛ばした。
 そしてグラムは、ヴァンの前に肉薄した。
「―――グラムか」
 ヴァンは顔を覗き込み、彼女の名を呼んだ。
 見知らぬ者に名前を呼ばれたグラムは驚き、慌てた。
 それでも大佐の特訓のおかげか、身体は危機感を感じ自然と夕張を握り締め、突き出した。
 ヴァンはグラムを見つめたまま、邪魔な刀を素手で捕らえた。
「こ、この―――」
 足でヴァンの身体を蹴飛ばそうとしたグラムは、刀に滴が落ちているのに気がついた。
 滴は血のように赤い液体ではなく。ヴァンの紅い目元から零れ落ちる淡い湖水のような滴だった。
「お前は我を知っている。我はお前を知っている・・・ ・・・、我が誰かをお前は分かるはずだ。愛しき者よ」
「!?」
 グラムは眼を丸くして驚いた。目の前にいるこの男、いやこの敵は何故自分に親しき言葉をかけるのかを。
 グラムは自分の記憶を呼び起こすが男が誰であるか分からない。その間に、茂みから飛び出す小柄な体躯があった。フランである。
 フランは飛び出し様に再びヴァイドダークネスを放った。
 今度はヴァンの不意を衝いたため、ヴァンの眼が眩み顔を抑えて後ずさりした。
「逃げるよ」
「ま、待ってください」
 技を喰らわせ隙ができたのを確認してフランはグラムの手を引いた。
 ところが全く動こうとしないグラムにフランは業を煮やし、無理矢理に引きずった。
 引きずられるグラムは自分から離れていくヴァンに向かって叫んだ。
「貴方は・・・ ・・・、誰なのですか」
 ヴァンは答えず、フランは見向きもせず、二人のネツァワル兵は戦線から離脱した。

あとがき
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# by inuis31 | 2007-05-12 20:15 | 小説
 約二ヶ月ぶりに、この前のあとがきの予告どおり? FEZにカンフー装備を取りに行ったチスターです(爆

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 いやーけっこうにあうなー(棒読み
 え? 受験終るまで禁止じゃ無かったって? そんな事俺が知r(マ、マテ.ハヤマルナ・・・ギャー
 すいません本当にスイマセン。でも、雑誌買ったからには手に入れたいんですよ orz

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 ま、待て早まるな・・・ギャー。ゆ、許してー。
 と、言う訳で折角なので一戦して来ました。もちろんお忍びで・・・ばれぬように・・・特に顔見知りに見つからぬように・・・

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 (チャットに注目)
 !!!!!!!!(゜д゜)!!!!!!!
 お、落ち着け俺。戦闘中に早々見つけられるもんじゃない。ここは冷静に――

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 ・・・ ・・・
 あー、見つかっちゃったー(棒読み)
 流石は雌株教団サーチ力は抜群だぜ! って言うより、常時ハイドサーチする戦場で真正面に立てばそりゃ見つかるかwww

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 オマケ1 初めてATの上に乗ったよ~byジャイ

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 オマケ2 必死に言い訳しながら逃げるチスターの図


 ・・・ ・・・
 また会いましょう (´・∞・`)





 でも、久しぶりにDOGメンバーに会えてよかったな~
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# by inuis31 | 2007-05-04 17:37 | ファンタジーアース ゼロ

復讐と鬣のロンド 五

 五話 戦いの火は消えて・・・


 目の前が眩しかった。
 頭が覚醒したベゼルは窓の向こうから差し込む朝日を手で遮った。
 しばらくすると、周りの明るさにも慣れ徐々に視界がはっきりしてきた。
 明るさに慣れて完全に眼を開けると、そこは馴染みの深い自分の部屋であった。
「戦いはどうなったんだ・・・ ・・・」
 気を失う前にいた場所との違いに動揺したベゼルはシーツの中で身体を動かし、半身を起こそうとした。
 だが身体が痛い。全身からこみ上げる様々な痛みでベゼルは再びベットに横たわった。
 よく見ると、ベゼルの上半身には綺麗とは言えない状態で包帯が巻かれていた。ベゼルが動いた拍子に傷口が開いたらしく、白い包帯に血がにじんでいた。
 怪我は確かに痛かった。しかし、メルファリア人の回復力は伊達ではない。
 そんなに時間は経たず痛みが引き、弱い足取りであるが歩けた。
 部屋中をヨタヨタ歩きながら、ベゼルは体力を回復するために食料を探し始め。戸棚をあさった。
「こんな時に限って品切れか。腹が減ったなぁ」
 ベゼルが落胆していると、唐突に部屋のドアが軽く叩かれた。
「はいはい。誰だ―――」
 扉に歩み寄り開けると、そこにはネツァワルの王女。エリスが遠慮深げに立っていた。
「お、王女様。この度は何の御用事で」
 条件反射のごとく、ベゼルは肩膝をついた。急な動きで傷口が悲鳴を上げるが構わなかった。
 国民の大半は王女エリスに対して普通に接する事が多い。けれどもベゼルは意外に真面目なので、丁寧かつ礼儀正しく接していた。
「そんなに堅くならなくてもいいよー。傷をいためちゃうよ」
「いえ、自分の事はお気になさらずとも結構。エリス様、重ね重ね申し上げますがご用件は何でございますか」
 ベゼルは相変わらず小柄なエリスよりも身体を下げ、顔を伏せていると。真上で黒い影が揺れた。
「用事があるのは、私」
 突然強い殺気に近いものを感じ。ベゼルは身体を丸めて後ろに転がった。遅れて先ほどまで身体があった場所を短剣が的確に凪いだ。
「・・・ ・・・ちっ」
「何が『ちっ』だ! 俺を殺す気かお前は!! 天然ステルス機能発揮してるから気付くの遅れただけじゃねぇーか」
 エリスの後ろに立っていたのはフランだった。フランの格好はベゼルのように頭や身体を包帯で巻いていた。
 そして、手には手頃な小ささの果物ナイフが握られ、鍛錬を積んだ研ぎ澄まされた動きで揺れている。
「別に、ただ衝動的にお茶目な衝動に、駆られただけ」
「遊びで生死の寸劇を起こすな!」
 お互いに気を緩めぬ間合いを取り、油断なく構えを決めた。本当に単なる遊びで生死の遊戯を始めようとした時、エリスが二人の間に割って入った。
「止めようよ! けんかはだめだよ。私はただべぜるのおみまいに来ただけなんだよ。ふらんがどーしても一緒にって。あれ? どーしてふらんが怖い顔してこっち見てるの? とっても怖いよ」
 何やら言ってはいけないことを口走ったらしいエリスは、フランに酷く睨まれた。だが睨んでいるフランは実際の所、恥ずかしさで顔を紅く染めていた。
「ああ、そうか。ありがとうなフラン。そうならそうと言えよ。恥ずかしがる必要は―――」
 喋っている途中のベゼルに、振り向き様のフランのビンタが頬に炸裂した。
「痛て、何するんだ・・・ ・・・って。止めろ止めろ、もう殴る―――」
 そのままフランは一通りベゼルを叩き続けた後、顔を染めたままエリスの手を引いて部屋から立ち去ってしまった。
 その去り際に、皮の向けたリンゴが傍の机に置かれた。
 ベゼルは何気なく残された不恰好なリンゴを手にすると、何も言わずに噛り付いた。
「う、あ。口に、滲みる」
 口の中の傷に滲みる果汁で顔をしかめたベゼルは、それでも芯の周りまでも丁寧に食べつくした。
 食べつくした後、何気なく新鮮な空気が吸いたい為に窓に近づいた。
 窓からは禿げた山脈と澄んだ川が流れ、その手前には訓練場が存在していた。
 ふと見てみると、訓練場に顔見知りの人物がこちらを見ていた。
「むぅ。ベゼルよ、身体の調子はどうかの」
 居たのはカール大佐と、小脇でぐったりしているグラムだった。
 何故か声をかけると同時に鍛え上げた肉体を満遍なく見せるが如く。数々のマッスルポーズを見せ付けてきた。
「見よ! この巨体から繰り出される肉体美を!!」
 ベゼルはさらりと大佐を無視してグラムの方に視線を移した。
 彼女とは先日の戦場でいささか気まずい分かれ方をしたのだが。今のグラムはそんな小さな揉め事がどうでも良くなるほど切羽詰っていた。
「ベゼルさん助けてくださーい!」
 全身にすり傷や打撲、かすり傷などを受けているが全て軽い。それでも、グラムの疲労は顔を見ただけで分かるほど青くなっていた。
「大佐。何してるんですか」
「むぅ。今ここで根性の無い新兵に戦いの厳しさと辛さをその肉体に刻み込んでいるのだ」
「嫌ぁー。その表現セクハラですよー。助けてー」
 グラムは悲痛な叫び声を上げ、あまりの特訓の厳しさに泣いているようであった。
「ああ、頑張ってくださいね。大佐」
 結局、グラムはたった一言であっさりと突き放された。
「むぅ。もちろんだ。このワシが一肌脱ぐからには、必ずや一人前の兵士にしてみせてやろう!」
「嫌ぁー。それ以上脱いだら犯罪ですよー」
 可哀想なグラムは誰にも助けてもらえず、大佐の太い上腕筋によって引きずられようとしていた。
 その時、ベゼルは何を思ったのだろうか。少なくともグラムを助ける気は微塵もなかったであろう。
「大佐。頼みたい事があるんですが」
 ベゼルは大佐を呼び止めた、
「錬金術師のアンさんに、最近行われた錬金術の資料を見せてくれるように頼みたいんですよ。できれば、今すぐに」
「むぅ。身体が治るまでは何もせぬ方が良いのだが・・・、うむ。いいだろう。しかし、あまり努めすぎるではないぞ」
 そう言うと大佐は振り返り、「さぁ訓練の続きだ」と叱咤しようとしたがグラムは忽然といなくなったいた。否、逃げていた。
「むぅ。グラムよどこに行った? さては迷子だな! これは大変だ探さなくては。それではベゼルよ、また後で会おう」
 手を振った後、大佐は猛然と駆け出した。
 最後に見えたのは大量の砂塵と巨体を揺らす姿が遠くに見えただけであった。
 しばらく、ベゼルは崖下に流れる川のせせらぎ、通りすがりの渡鳥のさえずり、広場ではしゃぐ子供達の声を聞いてから、
「今日も平和だな」
 とベゼルは呟いて、寒い空気を締め出してからベットの中に潜り込んだ。
 後になって、皆無事であった事に気付くのだが・・・ ・・・。
 今は寝てしまった。

あとがき
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# by inuis31 | 2007-05-01 22:09 | 小説

復讐と鬣のロンド 四

 四話 戦争の宴後半


 戦場は相変わらず悲鳴と怒声と鉄が触れ合い奏でる交響曲が響いていた。
 戦いの中。ベゼルは僻地を巡回しながら敵兵を倒していたのだが、
「お前は・・・ ・・・誰だ?」
 渦巻く戦塵の中ベゼルは倒れ伏しているフランを見つけ、抱き起こしていた。
 その二人のすぐ傍には、常人の二・三倍も背丈がある巨大な男が立っていた。
 男は身長と比べれば細身で、黒衣の服を纏い。露出するはずの部分は満遍なく巻かれた包帯に隠されていた。
「殺す奴等に教える名は無い」
 男は顔に巻かれた包帯の隙間から怪しく光る赤い眼でこちらを見据えていた。
 ベゼルは男を一瞥した後、重傷のフランをゆっくりと地面に寝かした。
「別にいいさ。殺した後に調べるからな」
 ベゼルは抜刀した。
「お前にできるかな?」
 男は人形のように顔を傾け可笑しく笑い、手に持つ特注の鎌を握った。
 初めに仕掛けたのは、ベゼルだった。
 剣を地面の上に走らせ、素早い一閃を男の足元から放った。
 男は傾けた頭の方へ身体を倒し、かわした。
 遅れて動いた黒衣の端は剣によって引き裂かれた。
「何故そんなに怒る?」
 男は足に力を入れて倒れる身体を止め。上から鈍重な動きで鎌を振り下ろした。
 ベゼルは咄嗟に盾を構え、身を庇った。
 だが、鎌によってもたらされた一撃は想像以上に重く。ぶつかり合った武具はにぶい音を放ち、周囲にこだました。
 ベゼルは鎌に押されながらも顔を引きつらせ、笑った。
「へっ、相棒がやられて黙ってられるほど利口じゃないのさ」
 ベゼルは盾を斜めに傾け、横に跳んだ。
 対象物を失った鎌は風を切り、刃の半分まで地面に突き刺さった。
「なるほど。つまらん男だ」
 男はゆったりとした動作で地から鎌を引き抜いた。
 べゼルは聞いているのか、聞いてないのか。剣の柄に力を込めた。
 そんなベゼルに、男は再び鎌を振った。
「脇が、がら空きだ!」
 ベゼルは迫る鎌の刃を通り越し、男の無防備な懐まで走った。
 勢いをつけたベゼルの剣は黒衣越しに男の肉を抉った。
「なるほど。筋は良い」
 男は身体に刺さった剣を気にせず、平然としていた。
「だが我には勝てぬ」
 男はベゼルの手と剣を片手で握ると、もう片方の腕で鎌を振り上げた。
 ベゼルは振り上げられる鎌を見上げ、必死に男の手を払おうとした。しかし男の馬鹿がつくほどの握力から逃れる事はできなかった。
「ここで死ね」
 振り下ろされた鎌はベゼルの鎧も肉も骨も関係なく切り裂いた。更に、重い一撃はベゼルの身体をいとも簡単に揺らし、吹き飛ばした。
 吹き飛ばされ倒れたベゼルは身体を強く地面に叩きつけられ、起き上がることができなかった。
「刃を逸らしたのか?」
 男は血の滴る鎌を見ながら、息絶え絶えのベゼルを見て言った。
「急所を狙ったつもりだった。苦しまぬように」
 男は一歩一歩とベゼルに近づいた。
「けれども死ねば、皆同じ!」
 男は鎌を振り上げ、振り下ろした。
 その時、確かにベゼルでも急所を外し生き残ったとしても。次の一撃で死ぬであろうことは分かっていた。それでも生への執着か、はたまた勝負を諦めない意地なのか知らないが避けた。
 朦朧とするベゼルは薄らぐ視界の中、中途で鎌を止める人間の姿を見た。
「戦いとは何が起こるか分からぬのぉ。そうは思わんか、ベゼル」
 筋骨隆々、スキンヘッドに長い白ひげ。そして何よりも着ている服はパンツだけの一張羅の姿。
 ベゼルは顔見知りだけど他人の振りをしたい格好の男が立っていたのに気付いた。
「カール大佐?」
「何!?」
 男は驚きの声を上げ、身体に似合わぬ跳躍力で間合いを離した。
「カール大佐。噂では過去の分からぬネツァワルの国王と古き戦友であり、『英雄の時代』の生き残り・・・ ・・・か」
 男は呟いた後。鎌を下段に構え、大佐に臆せず再び迫ってきた。
「ならば共に死ね」
 男はあえて大佐を狙わず、先にベゼルを倒そうと鎌を向けてきた。既に意識が無いベゼルには、避けられない。
「させると思ったか。若造」
 大佐は回りこみ、自身の両手武器でこれを受け止めた。
 長い柄の先にトゲトゲしい鉄球を持つ『エオスポロス』。大佐はその武器から片手を離すと、男に刺さった剣を捻って抜いた。
「ぐ、お」
 男は痛みで身体を崩し、再び後ろに跳んだ。
 大佐は抜いた剣を倒れているベゼルに返してやった。
「痛いか。今度は痛む暇をやらんぞ。そして、逃げ場もな」
 大佐が言うと、三人を囲むようにネツァワルの兵が近づいてきた。どうやら大佐が共に連れてきたようだ。
「ここは引いた方が得策か」
 男は凄まじい跳躍でオベリスクの上に飛び乗った。
「だが覚えておけ。これはただの序章に過ぎぬ。真の戦いは、これから」
 男は再び飛び退いて、崖の上に降り立った。
「我名はヴァン。エルソード国の兵である。復讐の為に・・・ ・・・また会おう愚か者ども」
 ヴァンと名乗る男は高笑いを残して崖の向こうに消えてしまった。
 

あとがき
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# by inuis31 | 2007-04-26 00:22 | 小説

復讐と鬣のロンド 三

 三話 戦争の宴、前半


 見上げる高さの雲は気の向くままに浮かび、その間からは淀みの無い青空が見える。
 鳥が飛び、風がささやき、時間はゆったりと流れている。
 しかし地上では、空と対極であるような残虐な光景が広がっている。
 真紅の血が舞い、鉄の刃が踊り、戦場を覆う戦塵が充満している。
 場所は乙の字型をした崖の上、唯一無二の前線がぶつかり合い。激しい戦火が上がっている。
 だが崖の下は至って平穏で、暇そうなグラムの顔が見られた。彼女はマネージャーを通じ、既に新兵として戦場にいた。
「私達は戦わなくていいのですか。ベゼルさん」
「良いんだよ。これも作戦と役割の一つだ」
 グラムの隣には、若干眠そうな顔をしたベゼルがクリスタルの近くで腰掛けていた。
 戦争の方はと言うと、相変わらず押したり引いたりの決定打の無い駆け引きが起こるばかりであった。
 もちろん。それは崖上で行われている戦いのみのことである。
「例えば、崖下に降りてくる兵を少しづつ始末したり、オベリスク破壊や建設を目的とした一団の進行を阻止または遅らせたり。一番はやはりキマイラの足止めだろうな」
 つまり、暇ながらも重要な拠点であるのだった。
 グラムは聞いた後、健全たる顔で、
「よく分かりません!」
 言い切った。
「・・・ ・・・」
 これ以上説明する事も、説明の仕方を考えるのも面倒であったベゼルは問いを無視した。
 視線を逸らし、適当に動き回る眼球は、前線から押し出されるように落ちてくる女の兵士を捉えた。身形からして敵兵のようだ。
「短剣オンリーのスカウトみたいだな。距離とブレイク技に気をつければ大丈夫だろう」
 ベゼルは腰をあげ、手を叩いて土を払った。
 それは別に、戦いを始める準備などでは無く。単なる自然な動作であった。
「良し、行ってこい。グラム」
「ええ!? 何で私なんですか!」
 文句を言うグラムに眠そうで面倒臭そうな顔が振り返った。
「いいから行ってこい。実力試験だ。そして命令だ!」
「うわ、権力の横暴反対!」
 そう言いながらもベゼルは上官。グラムは部下。命令を逆らうと後が怖いので、グラムは歩を進めた。
 しかし、途中で止めた。
「行って何をすればいいのですか?」
 ベゼルは問うグラムに対して、不可思議な物でも見るような顔をした。
「決まってるだろう。殺すか、または死なない程度に痛めつけて捕虜にするかだ。だがな、捕虜なんて降参した相手ぐらいじゃないと無理だな」
 ベゼルは言い終わらないうちにグラムの背中を突き飛ばした。
「ほら、行け」
 心の準備も無く押された背中はよろめき、背中から地面に落ちて転がっていった。しばらくして、止まった。
 当然、敵のスカウトはグラムに気付き、視線を向けた。
「あ・・・あの」
 立ち上がったグラムは何故だか敵に剣を向けず、女のスカウトに声をかけた。もちろん相手は返事をしなかった。
 代わりに、素早く距離を詰めると両手の短剣を回転させ、グラムに切りかかって来た。
 グラムは突然の動きに辛うじて反応し、間抜けな格好で横に転がった。
「何するんですか!」
 戦場では当たり前の行動に、グラムは驚き叫んだ。それをベゼルは呆れた顔で眺めていた。
「おいおい。戦う気あるのか? 敵はハイドで姿消してるぞ」
 その言葉に、グラムは周囲を見回した。傍には攻撃を仕掛けてきたスカウトがおらず、グラムは完全に敵を見失っていた。
 未だ姿を発見できないグラムの後ろから、ハイドのスカウトはゆっくり近づいた。そして、素早い動作で跳びあがり短剣を振りかざした。
 しかし、更にスカウトの後ろには気配を見せずに移動していたベゼルがいた。
「おら!」
 振り上げた盾を渾身の力でぶつけ、スカウトは身体をくの字に曲げながらグラムの頭上を越えた。
「あまり調子に乗るなよ。それにしても、ハイドサーチもできないのか。グラム」
 グラムは恥ずかしそうに頭を掻いた。同時に吹き飛ばされていたスカウトが地面に強く叩きつけられた。
 スカウトは殴られた脇腹を擦りながらも、不時着からしばらく経たずに起き上がりベゼルを睨みつけた。
「そう睨むな。お前とコイツの茶番劇はもう終わりだ」
 急に、ヒュと乾いた音がしたかと思うと、女のスカウトに無数の矢が突き刺さった。
 スカウトは驚きと痛みを堪えながら身体をよじり、上を見た。
 そこには高台から弓を構えた兵士が複数と、ソーサラーの姿が見られた。
 女のスカウトは慌てて逃げ出そうと足を動かした。だが頭上から雷が落とされ、後ろから炎の一撃を喰らい。最後に逃げられないように氷で身体の動きが封じられた。
「留めは俺がやる」
 ベゼルは抜いた剣で後方の味方を制し、女のスカウトに近づいた。
 スカウトは息絶え絶えになりながらも、短剣を振り最後の抵抗を試みていた。
「・・・ ・・・」
 ベゼルは無言のまま剣を振って短剣を飛ばし、返す刃で首を突き刺した。そして、強引に捻って抜いた。
「う・・・ ・・・」
 声さえ出ない女のスカウトの代わりに、グラムは吐き出してしまいそうな呻き声を飲み込んだ。
 ベゼルは首から真紅の血を吹き上げるのを気にも留めず、グラムに振り返った。
「最初は気持ちが悪いだろうけど、そのうち慣れるさ。戦場で死をまともに受け止めると精神持たないぞ」
 ベゼルはグラムを気遣って声をかけた。
「どうしてですか・・・?」
 グラムは下を向いたまま、声を発した。
「人の大切な命を何でそんなに簡単に奪えるんですか!」
 グラムは、本気の顔で怒っていた。
 ベゼルは少し驚いた顔で、しかし漂々とした態度をしていた。
「何言ってんだ。兵士が敵を殺すのは当たり前だ。相手もこちらも国のためや、はたまた大切な何かの為に戦ってるんだ。同じ立場なのに哀れむ必要は在りもしない」
 すんなり言ってのけた後、少し寂しそうな顔をした。
「失った事が無いから言えるんです! そんな理由、私は認めません!!」
「そうか・・・ ・・・」
 ベゼルはゆっくり納得したような顔で頷いた。
「なら去るんだな。臆病な建前を通すお前に、戦場を駈ける資格は無い」
 ベゼルはそのまま後ろを向き、グラムの顔も声にも二度と反応しなかった。

「建前だけじゃ、平和を守る事さえもできないんだ」
 後ろからグラムの反応が消えたのを確認して、ベゼルは立ち止まった。
「けれども、グラムの言う事にも一理あるんだろうなぁ・・・」
 そう思うと、どうしようもなくグラムの言う事は正しく。ベゼルは自問自答に押し潰されそうになった。
 ただ、正しくても現実にならないだけの本当は当たり前に正解である願い。
「それでも俺は、守りたい全ての者の為に戦うしかない」
 諦めなのか決意なのか、どちらにしろ今はそれで良いと結論づけた。
 風が吹き、更に激化する戦いにその身を投じるために、ベゼルは再び歩き出した。
 

あとがき
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# by inuis31 | 2007-04-22 17:29 | 小説

復讐と鬣のロンド 二

二話 木の棺桶


 箱の中には所狭しと敷き詰められた花と、少女がいた。
「・・・ ・・・は?」
 果物や野菜を入れるよりも死体を入れるのに適した。いわゆる棺桶という類の木箱の中に、それはあった。
 当然、開いた当人であるベゼルは驚いた。箱の中にいる少女はと言うと、死んだように、または死んでいて動かなかった。
 聞いただけではまさに王子様と眠り姫。そんな場面ができた原因は、ベゼルとフランが護衛した馬車にあった。

「あんまり品物に触ってくれるなよ」
「そう言われましても・・・、こちらもネツァワルの兵として積荷の検査をしたいのですが」
「うちの商品に怪しい物なんか無いよ! たく、国軍の兵だから送ってやると言ったが好き勝手されちゃ困るよ」
「いえ、こちらは一応護衛のつもりで―――」
「護衛は間に合ってるよ! 迷子さん」
「・・・ ・・・」
 慣れない丁寧語で適当に商人の機嫌を取ろうと思っていたベゼルと、未だに不信感を露にしている商人。
 結局の所、商人に二人が必要の無い場所にいる警備兵、イコール迷子の兵だと看破されてしまい。役には立たないと、馬車の後ろに追いやられてしまっている。
 ついでに言うと、馬車の後ろについて来るゴブリンやオークなどの調教された護衛に厳つい顔で監視されている。
「いや、やはり荷物の検査は兵士の務めだと・・・」
「商品に傷を付けたらアンタに請求するよ!」
「・・・いや、それは勘弁」
 汚名挽回とまで言わないが、兵士としての威厳を保つため任務に励もうと思うのだが。商人らしい言い返しに阻まれているのが現状であった。
 ベゼルは触らないで荷物を見回すと、エルソードで獲れる魚介類の干物やカセドリアで採られる珍しい果物類にホルディンの農民が作った新鮮な野菜までもあった。
 どれも食料のほとんどを他の国から来る行商人に頼るネツァワル国行きの商品だった。
 ただその片隅にある変わった形の木箱に違和感を感じたが、調べる事は出来ないので止めた。
 それにしても、
「眠いなぁ・・・」
 フランに連れられて散々迷い歩かされたベゼルは、体力の限界を感じていつの間にか横で寝ているフランに肩を貸して眠ってしまった。
 ―――それからしばらくして、
「ちょっと兵士さん。着きましたよ」
 愛想の無い声にベゼルは眼を開くと、馬車は既にベインワットの領内に入っていた。
 ちょうど馬車が止まっているのはグレートブリッジの中腹である。
「ああ、どうも送ってくださって」
「金にもならないお礼はどうでもいいよ。あんた兵士なんだろ。ついでだ、この木箱を王様に届けてくれよ」
 言い終わらないうちに商人は木箱と共に二人を馬車の外へ放り出した。
「さ、差出人は!?」
 ベゼルの意向を無視して遠ざかっていく馬車に向かって、精一杯の声で問いをかけた。
「さぁな。確かヴァンとか言ってたよ」
 商人は問いに対して吐き捨てるように答えると、馬車を引きつれ人ごみの中に消えてしまった。
「・・・参ったな」
 届けてくれといわれても一般兵士が王様に謁見する事の難しさは誰にでも理解できる無理な注文である。
 しかし、時々街に顔を出すエリス様ならまた別の話である。
 とりあえず、中身を確認しておこうと思い。ベゼルは箱の蓋に手をかけた。

「・・・ ・・・は?」
 ベゼルはまた呟いた。
 見た所、フランと同い年ぐらいの少女は花と一緒に入っていた。少女は栗色の長い髪を持ち、傍らには細身の刀剣『夕張』があった。
 ベゼルは少女が奴隷や怪しい実験に使うような商品かと思うのだが、身に纏う服装はやけに質が良い。
 ならば何故、どうして箱の中で眠ってベインワットに入って来たのだろうか。
 ただ一つ言える事は、
「これは、不法侵入という奴なのか?」
 その時、走馬灯にこの後の結果がベゼルの頭の中で過ぎった。
 不法侵入を許してしまったベゼルは減給に厳罰、酷ければ階級を下げられる。下手をすれば、少女を拉致するような非道と勘違い。そして退職。
 実際そうなるのか、ならないのか確証は無いけれども、ベゼルは最善の方法で事態を処理する必要があった。
 だが、
「よく寝た~」
 頭を捻って考えていたベゼルを無視して、少女が起き上がる展開が起こってしまった。
 半身を起き上がらせ、眠そうな顔で周りを見る少女とベゼルの眼が合った。
「・・・ ・・・」
「・・・ ・・・」
 一瞬、沈黙が漂った。
「な、名前何て言うんだ?」
 とりあえず周りの視線が少ないといえども、沈黙を守っている訳にはいかず、ベゼルの方が口を開いた。
「グラムです。あなたは?」
「俺はベゼル」
 と、悠長に自己紹介。
「むぅ」
 そんな最中で終にフランが起き上がった。
 フランも半身を起こし、眠そうな顔で周りを見ると傍の二人に眼が合った。
「・・・ ・・・」
「・・・ ・・・」
 再び沈黙が流れた。
「その子、誰?」
 何故か飛んでる小さい虫が落ちてきそうな殺気を放ちながら、フランは訊いた。
 問いかける言葉は驚くほど静かだが、鎮魂歌のように聞こえ逆に怖かった。おそらく、ベゼルが見た走馬灯の後者の理由が怒らせているであろう。
「待て、怖すぎるぞフラン」
「私は至って正常ですよ?」
「口調、変わってるんですが」
 怖い、本当にフランが怖い。ベゼルはフランから距離を離し、橋の瀬戸際まで後退して策を考えていた。
 理由も言えないベゼルに、フランは段々と顔を強張らせていく。ベゼルは色々な意味で「ここまでか!」と思ったのだが、
「あの~・・・、新兵募集はどこでしょうか」
 遠慮深いグラムの言葉がベゼルを救った。
「へ?」
 ベゼルは驚いて、フランは「ああ、そうか。早く言えば、良いのに」と先輩面して、グラムはキョトンとしていて・・・、
 つまり万事が上手くいった。
「私、住む国もなくて難民に近いんです。だから国に仕えたい、と思って」
「そうか。なら、こっちに来て」
「・・・ ・・・ははは、フラン。人を疑うのは良くないぞ!」
「うるさい。一遍、パニっとく?」
「すいません」
 ベゼルとフランとグラムは愉快そうに話しながら、棺桶の傍を離れていった。
 残された棺桶は半分開いたまま、強い風に吹かれ蓋が空中を舞った。
 蓋の裏側に書かれた『Vengeance』の大きな血文字は誰にも読まれず、川の中に落ちて沈んでしまった。

あとがき
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# by inuis31 | 2007-04-18 01:04 | 小説

復讐と鬣のロンド

一話 始まりは森の中


 何時間経っただろうか。
 緑色の怪しげな液中で血肉と骨は分解され、魂は行く当ても無く浮遊している。
 異形の肉片と彷徨う魂は、地を這う獣、ひ弱な老人、年端も行かぬ可憐な少女、屈強な男、エトセトラ。
 数千の肉片は一つの肉体に凝結しあい、器を求める魂達は先を争い殺し合う。
 その中で一つだけの魂が生き残り。今、強き肉体と精神を得ている。
 力を得た魂は、脳髄を這いずる怨讐と怨望が成すべき事を囁き出す。
 成すべき事、それはただ一つ―――
 復讐だ。

「とりあえず・・・」
「何?」
「どうすればこんな場所に来れるんだ?」
 男のウォーリアーと女のスカウトがたたずむ場所はうっそうと木々が生い茂る深い森。
 周りは背の高い木が大きく枝を伸ばしているため、暗い。
「当然、歩いたから来れた」
「・・・。一応行っとくが俺たちは痩せた草木の生えた荒野の真ん中にいたんだぜ?」
 おそらく、そう遠くは無いだろうか。
 この二人が元々いた荒野の戦場があり、二人はその場で戦っていたのだが、
「道に迷ったな」
 周囲を一瞥する男の名はベゼル。見た目は年若く、青いクセのある前髪を持つ。
 腕は立つのか、身に付けている防具には年にもよらず。幾千の戦いで受けた無数の傷が目立っていた。
「まぁ、慌てても、しょうがない」
 ベゼルの肩を慰めるかのように叩いたのは、白いツインテールと灰色のマフラーが特徴的な少女だった。
 見た目的な年はベゼルよりも若い。
「言っとくが、迷ったのはお前に責任があるぞ」
「なんで~」
「お前が確信有り気に『こっちだこっちだ』と手を引っ張って敵の僻地に潜り込もうとしたじゃねぇか!」
「ぁ・・・、あれはベゼルも賛成したじゃん」
 フランは気まずそうに明後日の方向を向いた。
「俺の賛否を、お前はその小さな耳で聞いてたのか?」
 ベゼルはおもむろにフランの耳を引っ張ると、フランは逃げるように跳び退いた。
「でも、きっと。あっちに行けば、森から出られる。はず!」
「・・・自信を持って推量系で言うな」
 あえて自己責任の逃避を続けるフランに、ベゼルは言うのも疲れたような顔で頭を掻いた。
 再度周囲を見て、木に登ろうかと思案している時。
 とても唐突に茂みが乾いた音を立て、揺れ動いた。
「・・・ ・・・?」
 ベゼルは訝しげな顔つきで茂みに振り向き、剣と鞘の触れ合う音を極小に抑えながら抜き取った。
 そのまま空中でゆらりと剣を舞わせ、静かに茂みに向けた。
「・・・ ・・・」
 剣をゆっくりと左右に振りながら茂みからの訪問者を待った。けれども何者も顔を出さず、沈黙の時間が続いただけだった。
 それを確認したベゼルは何の躊躇も無く、しかし慎重に茂みの中に顔を入れた。
 顔を入れて、それでも中に何もいないのを確認して、更に奥の茂みの反対側にまで顔を押し入れた。
 すると、そこには盗賊のような被り物と大きな鼻が特徴的な生き物が。
 つまりゴブリンがいた。
 ゴブリンは茂みが動く音に反応してこちらに視線を移そうとしていた。
 音への反応は早かったものの。ベゼルは条件反射で顔を引っ込めたので、ゴブリンは茂みが揺れ動いたようにしか見えていなかった。
「どう?」
 首を引っ込めたベゼルの後ろでフランの小声が聞えたが、返答は返さなかった。
 代わりに、小さめな声と手の動きで素早く状況伝えた。
 それと合わせて、気付かれると厄介なので念のため先に倒していこう。と云う指示も飛ばした。
 指示を受けたフランは無言でうなずき、短剣を逆手に構えた。
 鉄の掠れる音でフランの準備を把握したベゼルは軽く振り上げた手を茂みに向かって前へと振った。
 同時にフランは強く地を蹴って茂みの葉を吹き飛ばし、茂みの向こう側に飛び出した。
 遅れてベゼルも茂みの上を強力な跳躍で跳び越す。
「・・・あ」
 だが目指した場所にゴブリンは居らず、代わりに上品な服を纏った商人が入れ替わっていた。
「あわわわ!」
 着地地点が商人の居場所とずれているベゼルはともかく、フランは急激な状況変化に対応ができるはずも無い。
 突進の勢いを乗せた身体は商人を吹き飛ばし、あろう事か馬車に激突した。
 馬車はミシリ、と重い音を立てフランは頭を抱えながら傍でうずくまった。
「と、盗賊だぁー!」
 商人はよろめきながら立ち上がり、慌てて荷車の上に逃げ込もうとした。当然、急に強盗の様に押しかけられれば誰でもそう思う。
 ベゼルはそこで慌てず荷車の後ろに回りこみ、商人にゆったりとした口調で話しかけた。
「旅の商人様。先ほどの非礼をお詫びします。我々は怪しい者ではありません。今しがたこの付近を警備していた正真正銘のネツァワル国の兵であります。どうか警戒を解いてください」
 ベゼルは証明するかのごとく、肩に刻まれた紋章をさり気なく見せた。
「そ、そうでしたか」
 商人はまだ疑い深い視線を投げかけてくるが、それもしょうがない。
「やれやれ、俺もフランを攻められる性質じゃないな」
 小声で呟くベゼルは雇われたモンスターと共に旅をする商人のキャラバンを見回した。

あとがき
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# by inuis31 | 2007-04-15 21:47 | 小説
 今回で買うのを最後にしようと思っていた電撃オンライン。
 でも、vol.11で休刊するので思っていた意味がかなり無かったりする・・・w。
 さて、なにやらDOGデザインのアイテムが付くとか付かないとかを聞きながら買ってみたところ、実際に防具四点のシリアスナンバーが付いてたり。
 ・・・・。
 五月のアップデートで実装するとか―――。
 ・・・・。
 き、期限あったらどないしようorz。
 期限あったら最終日だけやろうかな・・・と本気で悩み中。
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# by inuis31 | 2007-04-04 13:58 | 何となく
 詳細は題名の通りです。
 しかし、一話目を削除する時に一番驚いた事は、書き出したのが
 9月24日だったことですねw
 一体何ヶ月ほったらかしにしてるんだろう・・・自分。
 下書きの方は今のところ第8話。そろそろクライマックスの部分を書いております。
 興味のある方がいらしたら、ゆるりとお待ちください。

 にしても、9月って・・・。下書き完成したからにしようと思ったけど止めようかな~ orz
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# by inuis31 | 2007-03-28 00:15 | 小説