小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド 十

 十話 終幕は悲しみと共に


 戦いは、刃が触れ合い鉄が奏でる序曲と共に始まった。
 グレートブリッジの上で、ブレイズスラッシュとストライクスマッシュがぶつかり合い。ベゼルとヴァンは互いの息遣いが聞えるほど肉薄した。
「お前では、我に勝てぬ」
 ベゼルは馬鹿が付くほどのほどの力で吹き飛ばされる寸前。耳元で嘲け笑うような台詞が聞えた。
「先の戦いでも思ったが、つくづくふざけた野郎だな」
 ベゼルは吐き出すように言い返した後、軽いステップで吹き飛ばしの勢いを殺す。
 続いて踏み込んだ足に力を入れると、剣を振って技を飛ばした。
 振った剣からは槍のような白く鋭い衝撃波が飛び、さほど遠くにいないヴァンを捉えた。
 衝撃波はヴァンの肉体を貫き、激しく血飛沫が飛んだ。
「この程度か!」
 茶々な攻撃と言わんばかりにヴァンは大鎌を振るうと、咆哮を上げた。
 その間を縫い。ベゼルはヴァンの懐に跳びこみ、燃える剣先で軽くヴァンの肉体を凪いでやった。
 傷は掠る程度の深さであったが、最高火力のブレイズスラッシュが腐った肉を原料に激しく燃えた。
「あづづ・・・ ・・・。五月蠅いぞ小僧が!」
 ヴァンは両腕を振って火を払う。共に振り回された鎌は唸りを上げ、火を掻き消し、難を逃れた。
 しかし、それだけではない。
 振り回して振り上げた鎌を、ヴァンの足元にいるベゼル目掛けて急速に迫った。
 ベゼルは深く攻撃をしていないので、これを難なくかわした。が、
「それで避けたつもりか」
 地に堕ちた鎌の威力は、通常ではありえない巨大な振動となって地を這い。周りを巻き込んだ。
 普通なら手が届くほどの周囲を攻撃するドラゴンテイル。だがヴァンの巨大な力と鎌の質量が加わり、常識を超えた技になっていた。
 周りの簡素なテントは原型を留めず崩れ落ち。飛び退いて攻撃範囲外に逃れたはずのベゼルさえ、足を取られ転倒した。
「これで終わりだ!」
 転んで無防備なベゼルに対し、転ばずに余裕の表情さえ浮かべているヴァンがゆっくりと歩み寄ってきた。そして、渾身の力を入れ大鎌をベゼルに振り落とす。
 その攻撃は仰向けのベゼルにとって、避け難い一撃だった。
 それでもベゼルは鎌から逃れようと身体を捻った。
「無駄だぁ、小僧」
 鎌がベゼルの身体を引き裂こうとした瞬間。ヴァンは嘲け笑い、ベゼルは諦めず身体を転がした。
「ガシュ」
 肉を引き裂く音。ではなく、木を切り裂く虚しい音が橋に木霊した。
 ヴァンの必殺の一撃は何も無い足元に食い込み、ベゼルには掠りもしなかった。
「戦いとは何が起こるか分からぬのぉ。そうは思わんか、ベゼル」
 それは諦めなかったべゼルの功績ではなく。横から武器を伸ばし、攻撃の軌道を変えたカール大佐の横槍を入れた結果であった。
「また邪魔をするのか。カール」
 ヴァンは巨大な鎌を肩に置き、不動の体勢で距離もとらず屈むような低い体勢で身構えた。
 戦いの中で一層燃え上がったヴァンの紅い目は、カールとベゼルの両方を睨みつけた。
「だが、死ねば皆同じ!」
 カールと始めて会った時と同じ事を言い。間髪入れずに再び鎌で地面を叩いた。
 遅れてカールも地を叩き、二つの衝撃は反響しあい。再度橋は大きく震えた。
 その震えにたまらずカールは転び、周りのテントの布は大きく飛び上がった。しかし、ヴァンはぴくりとも動かず、これに耐えた。
「俺の勝ちだ・・・?」
 ヴァンはカールに近づこうとした。近づき攻撃を仕掛けようとした。
 だが、目の前の光景に違和感を覚えた。
「俺の勝ちだ。ヴァン」
 それに気付く前に、後ろから声が聞えた。
 ヴァンはすぐさま後ろに振り向こうとしたが間に合わず。剣が左の胸を深く貫いた。
「お前でも、心臓を貫かれたら終わりだろうに」
 剣は半回転して、ゆっくり引き抜かれた。
 抜かれたヴァンは膝を突き虚空を見つめたまま、後方のベゼルに訊いた。
「・・・ ・・・何故動けた。小僧」
「簡単だ。お前みたいに伏せただけだ。意外に耐えれるもんだな」
 ヴァンは技を打ち出す瞬間。身体を伏せることで足元を安定させ、すぐに動ける体勢を保っていた。
 ベゼルは一度でそれに気付き、舞い上がったテントの布の陰から回り込んでいたのだった。
「こ、小僧があぁぁぁ!」
 ヴァンは吼えた。最後を悟り、復讐が成就し得ない現実に向かって、大声で唸った。
 全身にアドレナリンが循環し、ヴァンは死に向かう身体を奮い立たせた。
 生き物の身体は、心臓を抉られたとしても数十秒間は動ける。そのおかげで、ヴァンは再び立ち上がった。
「我は終わる。だがお前達もだ。復讐だ・・・ ・・・復讐だ!」
 ヴァンの身体は熱を持って紅く光り、周囲の空気が音を立てて蒸発していく。
 ヴァンは嘲け笑うような顔で、ベゼルの方を向いた
「ファイナルバーストを知っているか?」
 ファイナルバースト。それはキマイラが拠点を破壊するために、体内のエネルギーを起爆させる大技であり、自爆技。
 しかし、この技の代償にキマイラは絶命する。多大なる損害をその場に残して、だ。
 気付いたベゼルは咄嗟に剣を胸に構え、ヴァンに斬りかかった。
「遅いぞ小僧!」
 ヴァンは無造作に腕を振った。
 予想外の攻撃に、ベゼルは対処する術も無く。橋の手すりに叩きつけられた。
「ぎゃははは―――!」
 ヴァンは技の成功を悟り、天に顔を向け笑った。けれども、その考えは浅はかであった。
 ヴァンは横から強い衝撃を感じ、次の瞬間には橋の外へと吹き飛ばされていた。
「な、何故だ」
 ヴァンを突き飛ばしたのは、カールでもなくフランでもなく、ネツァワルの兵でもなかった。
「何故裏切った。グラム!」
 ヴァンの視線の先にいたのは、剣を携えたグラムであった。
「私はもう、何も失いたくない」
 グラムは橋の下に消える兄から―――、ヴァンから目を離した。
「貴方はもう・・・ ・・・、私の知っている兄さんじゃないから」
 言葉とは裏腹に、心の底から湧き出る悲しみが顔に出ており。細めた眼からは留めなく滴が流れ落ちていた。
「ごめんなさい」
 その後は言葉にならず、グラムは泣き崩れた。
 遅れて、ベインワットは空気を震わす爆発と爆音で悲しみと共に揺れた。

あとがき
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by inuis31 | 2007-06-14 23:03 | 小説

復讐と鬣のロンド 九


 九話 決戦の序章


 光の無い暗闇で、男は笑っていた。
 大柄なその男は全身に汚れた包帯を巻き、異様に眼を紅く光らせていた。
「血が沸き、肉が蠢く。心が鼓動し、魂が鳴動する。楽しみだ。これから起こる惨劇を思うと・・・ ・・・」
 男は大きな片手で顔を覆い、含み笑いをした。
 その後ろの、暗闇の更に向こう側で無数の兵は物言わず、沈黙を守っている。
「さぁ始めよう。滑稽で単純で残酷な劇を―――」
 男は両手を挙げ、見えない天を仰いだ。呼応するように、後ろの兵たちは前進を始める。
「我の望みは復讐だ」
 男と兵の一団は闇から光の当たる場所へ突き進んだ。

「あー、怠けすぎだな」
 間抜けな声が聞えた。
 重い鎧を身体に固定し、引きずるようなベゼルが声の主である。
 身体が重いのか辛いのか、顔には疲労の色が見える。
 歩く場所は見慣れたベインワットの洞窟内。朝の通りは商人、兵士、主婦、メイドが相変わらず忙しく流れている。
 いつもの通りの様子と違うのは、王宮に仕える人間の類がいつもより多い事ぐらいである。
「資料はアンさんに返した。大佐に完治の知らせはした。途中でフランに襲われた。と、今のところ計画通りか」
 三つの項目の内、最後の一つは疑問的であるものの。ベゼルは過去の情報を頭の中から消去した。
 そして、唐突に懐から手紙を取り出した。
『明日の朝、グレートブリッジで待っています。byグラム』
 その朝が今日なので、ベゼルはナメクジにも劣る足で向かっている。
「待っている、か。そういえば最近グラムが落ち込んでいるらしいから、それか? でもフランの情報は十回言ったら全て嘘だからな」
 ぶつぶつと呟きながら、ベゼルは既にグレートブリッジ前の門に立っていた。
 大きな門は閉めるのも億劫なので、相変わらず開いていた。
「・・・ ・・・?」
 ベゼルは開いた門の前で訝しげな表情をした。
 何故かは知らないが、自分の胸の奥に潜む本能が危険信号を挙げている。
 危険信号は胸の奥に止まらず、視覚的にも現れた。それは、誰もいないグレートブリッジの光景である。
 通常なら商人が声を張り上げて品物を売り、その商品を下見する冷やかしの客が歩き、雑談に熱心な若者達が鎮座している。
 それが、今は一人残らずいないのだ。
「まさかな・・・ ・・・」
 フランはともかく、グラムがここまで異質なイタズラをするとは思えない。
 門を抜けたベゼルは右手に剣を当て、慎重に橋の真ん中を歩き始めた。
「久しぶりだな。小僧」
 ベゼルの進行方向から、一度は聞いた覚えのある重く低い声が響いた。朝特有の白い靄に隠された向こう側には、確かに誰かがいた。
 旋風が吹き、靄が飛び、現れたのは兵士の一団と大柄な男だった。
「ヴァンだな」
 ベゼルは右手を振り上げるように剣を抜き、構えた。
「こんな山の中に何の用だ。迷子か? それとも玉砕の覚悟か」
「前者は小僧の相棒と同じではない。と、返そう。後者は我だけの一団では勝てない。と。返そう」
 ベゼルは「我だけの一団」の言葉が妙に引っかかり、まるで他にも多くの仲間がいるような言い方であった。
 しかし、ベインワットは自然の要所に守られ、大軍を阻む。ありえない。
「それはそうと、この小娘はどうしようか」
 ヴァンは自分の斜め右下を指した。そこにいたのは―――、
「エリス様!」
 彼女に気付いたベゼルは驚愕の顔を作り、それはすぐに怒りの表情となった。握られた剣は、更に強く圧迫され軋んだ。
 そのベゼルの姿に、ヴァンは鼻で笑った。
「ふん。この小娘は人質であり保険だ。我の復讐の代償には取るに足らない犠牲だ」
「復讐?」
「そうだ」
 ヴァンは笑いながら両手で空を仰いだ。
「クックック、復讐だ。それこそ我の成すべき事だ。我ら貴族を妨げ、財産も地位も誇りも奪い去った国に罪の精算を促す。そのために、我はエルソードに入隊した」
 ヴァンが言う復讐なら、確かにエルソード以外の国がそれに当たる。
 例えば、貴族の優遇処置を廃止したゲブランドにネツァワル。
 例えば、貴族に反乱を起こし主権を奪ったカセドリアとホルディン。
 その四つの国に復讐すると言うなら、やはりエルソードが適任であろう。
 だが、
「くだらないな」
 ベゼルはその一言で一蹴した。
「なんだと・・・ ・・・」
 自分の信念を侮辱されたヴァンは、表情に出さずに怒り。その代わりに顔が凄みを増した。
 ベゼルはそれでもヴァンに口を開かす隙を与えず、言葉を続けた。
「復讐だ仕返しだなど、くだらない。失う自分が悪いだろ。守れない自分が原因だろ。悲劇のヒロインやヒーローを気取るなよ!」
 ベゼルはズバリとヴァンを指差した。
 言われた当人のヴァンは怒っているのか悔しいのやら、水面の鯉のように口をパクつかせた。
「それに、復讐の為に身体を捨てたお前が許せない」
 急に話題を変えたこの言葉は、ヴァンに冷水を被せる効果が眼に見えるように表れた。
「・・・ ・・・何時知った」
「近年行われた錬金術の成功例と考察。の資料に名前が書いてあったよ。錬金術史上初の人体実験の成功だとな。学問に国境は無いと言うけど、調べた甲斐があった」
「何故錬金術関連だと?」
「お前から出る腐臭さ。キマイラと同じ臭いだよ」
 澄ました表情でベゼルは語り終え。入れ違うようにヴァンは含み笑いを浮かべた。
「流石は、と言っておこう。だが、我の正体を知ったところで何も変わらぬ」
「そうでもないぜ」
 ベゼルはそう言って、視線をヴァンの斜め右下に動かした。
 釣られるようにヴァンも見ると、そこには先程までいたエリスがいない。
「なっ、何処に行った!」
 ヴァンは部下に向かって吼えながら、周りを見回した。すると、答えは自分の眼からすぐ返ってきた。
 ちょうどベゼルの横で、エリスは不自然に浮いていたのだ。
「ご苦労フラン」
「どういたしまして」
 ハイドを解いたのはフランであった。
 ベゼルが饒舌を披露している隙に、フランがハイドで接近しエリスを奪還していたのだ。
「このおぉ!」
 明らかにベゼルの手の内で戦況が変化していた事に、ヴァンは苛立った。
 苛立ったが、その顔は突如として笑みに変わった。
 それはまるで、面白可笑しい物を見つけた餓鬼のようであった。
「そうだそうだ忘れていた。紹介しよう。我と共に復讐を果たす家族だ。小僧達も良く知っているはずだ」
 ヴァンは後ろに手招きをした。そこから恐る恐る出てきたのは、
「さぁ、グラム。復讐を果たそう。」
 ベゼル達の知るグラムだった。
 まるで立ち位置を間違えたように、平然とその場にいた。
「ごめんなさい。皆」
 ベゼルは手を握り締め、怒りが溢れようとするのを抑えた。悲しみも混じった―――それを抑えた。
「気にするなグラム。今は敵であろうとも、お前は俺の大切な仲間だ」
 ベゼルはグラムの姿から眼を背け、ヴァンに向き直り、剣を構えた。
「行くぞヴァン!」
「掛かって来い小僧!」
 悲しみと怒りを背負った戦いが、幕を切って落とされた。

あとがき
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by inuis31 | 2007-06-05 22:05 | 小説