小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド 八


 八話 昔とバナナ


「終わった・・・」
 窓から差す朝日が顔を覗かした頃、ベゼルは重く厚い本を閉じて一息ついた。
 大佐が頼んだとおり、錬金術師のアンは快くベゼルに書物と資料を提供してくれた。
 渡された本は基本的な「錬金術の本」から「近年行われた錬金術の成功例と考察」のようなマニアックな資料まで、幅広く用意してくれた。
 おかげでベゼルは昼夜をかけ、全てに眼を通す羽目になった。
「ったく。何で俺がたった敵兵一人の為に苦労しなくちゃならないんだよ」
 ベゼルは睡眠不足のためか、本に当り散らした。
 放られた一冊の本は、山積みされた本の一角に当たり、崩れた。
「・・・ ・・・」
 そのまま、跡形も無く微塵に切り裂こうか。と思ったが、アンの持ち物なので丁寧に積みなおす事にした。
 なぜならばメイド服で好評なアンは、隠れた噂によると中身は漢であるからだ。裏づけされるように、彼女の口調は男口調。服を纏った二の腕は張り裂けんばかりに太い。
 したがって、怒ると怖い。
 地面にしゃがみこんで本を積み直すと、ベゼルの後ろで微かに扉の閉まる音が聞えた。振り向くと、扉の傍にあるテーブルに食事が置かれていた。
「あいつ。またコソコソと・・・、隠れる必要あるのか」
 あいつ、と言うのはフランのことである。彼女は最近部屋に引き篭もりがちなベゼルの為に、わざわざ食事を持って来ている。
 だが、何故か何時も短剣スカウト特有の常時ハイドで姿を見せない。
 エリスに聞くところ、
「ふらんはきっと、はずかしーんだよ」
 と、お言葉を賜った。
 そう言われても、ベゼルでは言葉の意味を捉え切れなかった。
 大体フランは幼い頃から深い仲。敬遠される筋合いは無い。その仲は思い出すだけで腹が立つほどだ。
 例えば、子供の頃初めてベインワットに訪れた時。緊張していたベゼルの第一歩を落とし穴で沈めた奴がいた。無論フランである。
 他にも度々弄られた昔話が数え切れぬほどある。
 ―――あー、なんだかムカついてきた。
 ベゼルは心の中で悪態をついた。そして、彼女が今の様に変わった原因の出来事を思い出した。

 当時、ベゼルとフランの両人は大佐の下でお世話になり。それでも、まだ十歳に届かぬ年の頃だった。
「待てー、待て待てー!」
「こっち来るな! こっち見るな!!」
 首都から離れたビクトリオン大陸南に位置する草原。雑木林も多く、自然に恵まれた場所。
 幼きベゼルとフランは、豊かな自然の中を駆け抜けている。どっちかと言うと、かなり一方的に・・・。
「待てー。私が覚えたヴァイパーバイトの、実験台になれー」
「兵士になる前に死にたくない!」
 何故そのような大陸の端にいるのかは、育ての親でもあるカール大佐の任務があるからだ。
 任務といっても、カセドリア国と取引をするものである。
 ネツァワルの上等な武具と、カセドリア国の新鮮な食材を交換する。敵同士であるものの、互いに必要な品物の交換である。
 話は戻って、フランは逃げるベゼルを追いかける。
「待てー!」
 ベゼルが一瞬振り向くと、フランは既に短剣を抜いて振り回している。非常に危険なのでやめて欲しいと心の底から思った。
 ジグザグに逃げるベゼルに対して、追撃するごとく背中の向こうでヴァイパーバイトが煌いている。
「もうダメ・・・ ・・・」
 足をもつれさせたベゼルは倒れこむように、その場で止まった。
 ところが更に遠くに標的がいる事を見越した短剣は、ベゼルを飛び越し頭上を越えた。
 後は何も捉えず地面に刺さるか、虚空を切り裂くと思われた。しかし、『ザクリ』という肉を引き裂く音が聞えてきた。
 不審な音を聞きつけて、ベゼルが顔を上げる。その横をフランは必死の形相をしながら通り過ぎた。
「やばい、逃げろ。ベゼル」
 ふとフランの後ろを見ると、赤い皮膚を纏い羽の生えた爬虫類が四足歩行で這いずってくる。
 リザードフライである。
 身体の一部が傷付けられ、どうやら怒っているらしい。
 ベゼルは素早く立ち上がり、踵を返しフランを追いかけるよう逃げ出した。だが、体力は限界で思うように動かない。
「ぶぇ」
 その時、フランが短い草に足を取られ顔面から倒れこんだ。
 もし、この時フランを囮にすれば逃げられるのではないか。という打算がベゼルの脳裏に過ぎった。
 フランのベゼルに対する仕打ちを考えれば、妥当な選択であった。
 けれどもベゼルの中で葛藤が起こった。人を守る兵士になる者として、味方を見捨てる事は正しいのか・・・と。
 二つの気持ちに迷いながら、ベゼルは倒れたフランのすぐ傍を通ろうとした。
 一瞬、助けを求める悲しい瞳と眼が合った。
 ベゼルはそのまま走り過ぎた。そして足を踏み締め、拒む恐怖を無視して逆方向に進んだ。
「守れる者を守れないで、何が兵士だ! 何がネツァワルの兵だ! 俺は見捨てねぇぞ。かかってこいモンスター!」
 怯えた顔で声を張り裂け、ベゼルはリザードフライとフランの目の前にとび出した。
 短剣にも劣る貧弱な剣を両手で握り締め。勇敢にもリザードフライを睨み返した。
「ガァァァー!」
 鋭く唸りを上げるリザードフライは口の中に燻る火を溜め、灼熱の炎を浴びせようとした。
 すると、突然リザードフライの側面に無数の矢が突き立てられた。
 そのままリザードフライは驚きで眼を丸くして、絶命した。
「危ないところでしたね」
 その声は年若い少女の声であった。
 矢の飛んできた方向を見ると、弓を携える中年の男性とたおやかな少女がいた。
 少女の方は細身でブロンドの髪を持ち、神聖な雰囲気が感じられ、年は幼いベゼルよりも上である。
 後で分かった事だが、傭兵将軍ウィンビーンと聖王女ティファリスである。
 ウィンビーンは倒れたフランを抱き起こすと、擦り剥いた傷を介抱したり、カセドリア名産の黄色い果物を与えていた。
「怪我はありませんか?」
 介抱されるフランを見ていたベゼルに、ティファリスは近づいた。
「大丈夫です。僕とフランを助けてくださって、ありがとうございました」
「そのお礼はウィンビーンに言ってやってください」
 ティファリスは更に近づき、落ち込んだ様子のベゼルを優しくなでた。
「貴方は勇敢で優しいのですね。まるでウィンビーンを見ていたようでした」
「僕はあの人のように強くない・・・ ・・・」
 ベゼルは俯いた。
 もし、ウィンビーンの助けが無ければベゼルは死んでいるだろうし、フランを守る事さえできなかったであろう。
 それを考えると、ベゼルは自分の不甲斐なさに苛立ちを感じずにいられない。
 その時、ティファリスはベゼルと視線を合わすようにしゃがみこんだ。
「今は良いのです。大切な人を守ろうとする気持ちは、貴方を強くするのです。自分に諦めず、心を強く持つのです」
 そう言われると、ベゼルの気分は幾らか楽になった。
 その後、王女達と別れて、自分は強くなってみせると約束したベゼル。約束は今のところ及第点である。
 ティファリスが言っていた「大切な人を守ろうとする気持ち」は未だに分からない。
 ただ、フランの眼を見た瞬間に得た。心が熱くなるあの感情は似た意味を持つのだろうか。
 しばらくして、昔を思い出すことに疲れ。ベゼルはそのまま布団に潜り込み、寝てしまった。

「ごめんなさい」
 暗闇の中で、滴の落ちる小さな音が響いた。
「皆、ごめんなさい」
 また同じ謝罪を、誰とも知らずにその場で呟く。
「私には、使命があるから。やるべき事があるから」
 女性らしき者は小さな誰かを持ち上げると、暗闇の中を歩いた。
「兄さん。これで良いのですね。私達が再び元の生活を取り返すためには・・・ ・・・」
 女性は静かに窓を開いた。
「本当にごめんなさい」
 窓は小さく音を立て閉じられた。誰にも聞かれず、誰にも知られずに。

あとがき
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by inuis31 | 2007-05-25 00:08 | 小説

復讐と鬣のロンド 七

 七話 復讐の火種


 日が落ちたベインワットは暗かった。
 一日の仕事を終えた商人達はグレートブリッジの上にいない。代わりに物音一つしない暗闇の向こうに、グラムが居た。
 傍らの松明に顔を照らされ、その顔は考え事をしていた。
「私には家族も友達も地位も富みも・・・ ・・・。全てを失っているのに、何故ですか」
 海辺であった大柄な男、ヴァン。彼はグラムのことを知っているようであった。
 珍しく先輩であるフランが一緒に食事を取らないか、と聞いてきた。だが今は、愉快に話しながら食事の気分にはなれなかった。
 フランと別れたグラムは、ただ何もせず彼のことを考えていた。
 考えていると、唯一知っている男性の存在が頭をよぎったが体格も顔も違いすぎた。
 やはり、あの男の人違いであろうか。
「何を考えておられますか」
 不意に闇の向こうから若い男の声が聞えた。
 グラムはビクリと身体を震わせ、声が聞えた方向に眼を凝らした。
 そこには見慣れぬ鎧を着こなした若い風貌の兵が立っていた。
「ごきげんようお嬢さん。そして、さようなら」
 男はゆっくりと大斧を持ち上げた。
「私も何かと忙しいので、遊ぶつもりはありません」
 男は大斧を振り上げ跳躍し、グラムとの距離を瞬間的に縮めた。
 グラムは頭で考えるよりも早く左腕を動かすと、大斧と自分の間に盾を滑り込ませた。
 盾と斧はぶつかり合い。盾を伝って鈍い衝撃が全身を震撼させた。
 グラムは後ろに跳び、右手で刀を抜いて構えた。
「ネツァワルの兵ですか? そうであれば許します。でも違えば許しません」
「今更訊くのですか。敵か味方か問わずに飛び掛る者は敵ですよ。戦争と同じ様にね」
 男は話しながらゆっくりと足を動かす。グラムもそれに合わせてにじり足で下がった。
「中々用心深いお嬢さんですね。これでは間合いを詰められませんよ」
 男は言いながらもまた一歩近づき、グラムもまた下がった。
「しかしですね」
 男がグラムに進める歩が早くなる度に、グラムも素早く後退した。
 その距離は一向に縮まらない。しかし、永遠に逃げられるものでもない。
 グラムは大股で進む男に対して再び退いた。けれども後ずさりする背中が壁にぶつかり、動けない。
 グラムは心の中で自分の浅はかさに舌打ちした。
「ほら、もう逃げられない」
 男は最初の一撃と同じストライクスマッシュの構えを取った。
 グラムの方は盾を装備しているため、バッシュで迎撃できるものの。身体にエンダーペインをかけていない以上。失敗すれば敵のコンボで致命傷になりかねない。
「先ほど言うとおり、私はそんなに暇まではありません。私の任務を完遂するために人を探さなくてはいけません。では、終わりにしましょう」
 男は足を踏み込み、今にもグラムの懐に飛び込もうとしていた。
 ―――死ぬのですか、私。
 グラムは心の中で呟いた。
 ―――私が死んだら、私を失ったフランさんは悲しむかな、泣いてくれるかな。大佐はどうだろう、抱きしめてくるだろうから嫌だな。
 グラムは口元で少し笑った。
「余裕があるのですか」
 男は勘違いしたらしく、怪訝な顔をした。
 ―――でもベゼルさんはどうかな? 私が思うに不精面して立ってるだけかな。
 グラムは考えている内に、喧嘩したまま謝っていないベゼルの顔が思い出された。
「相手もこちらも国のためや、はたまた大切な何かの為に戦ってるんだ。同じ立場なのに哀れむ必要は在りもしない」
 ―――そう言っていたような気がする。
 自分もその中に入っているだろうか。それとも違うのか。もはや確認する事もできない。
 グラムは無言のまま涙した。
「どうやら怖気ついたようですね」
 男は勝ち誇った顔で大斧を振り上げ、飛び掛ってきた。
 その距離十五歩弱。
 ―――負けられない。
 グラムは盾を捨て、両手で剣を構えた。
 残り十歩。
「勝負さえ捨てたのですか。愚かですね」
 男は嘲け笑いながら、すぐ傍まで近づいてくる。
 グラムは再度、鞘に剣を収めた。
 顔には決意の色が見え、右手でそっと刀を掴んだ。
「私はもう何も失わない!」
 瞬間。男の眼前からグラムが消えた。
 代わりに男の身体から血が迸り、地面に崩れ落ちた。
「何が・・・、起こったの、ですか」
 男は手に滴る大量の血を見て、自分に深々と刻まれた傷を知った。
「か・・・、片手剣には、無い技です、ね。驚き、ました・・・ ・・・よ」
 男は言い終えると、身体に纏う全身の生気が消え去った。
 グラムは男を背に、刀を抑えたまま身を縮めていた。
「フーッ、フーッ」
 グラムの両眼は恐れと興奮で瞳孔が開き、息を荒げていた。
 鞘から覗く刃は血がこびり付き、グラムの勝利をせせ笑うように紅く煌めいていた。

 しばらくして、身体と心を落ち着かせたグラムは後ろを振り向いた。
 男は血溜りの中うつ伏せに横たわり、心臓は鼓動を止めていた。
 グラムは動かぬ人間の姿を見ても恐れない自分に恐怖し、身体を強張らせた。
 その後、男の鎧から覗く白い封筒に意識が向いた。
 男の話から密書であろう、と見当をつけたグラムは血で汚れぬよう慎重に封筒を抜き取った。
 一応確認のつもりか、グラムは封筒から綺麗に手紙を取り出した。
 ところが、内容を見始めたグラムの顔は豹変した。その顔の色は焦りと驚きに満ち。身体は凍りつく。
 そのまま陽が山頂の上から覗くまで、グラムは衝撃の余り、動く事ができなかった。
 

あとがき
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by inuis31 | 2007-05-16 21:55 | 小説

復讐と鬣のロンド 六

 六話 涙の理由


「右翼防衛陣崩壊! 後方の部隊が敵を食い止めています」
「左翼の部隊が救援を求めています!」
「後方部隊を中心に向け、左翼部隊は敵を迎撃しつつ、中央と合流。意地でも、物資を守れ」
「ふぇ~ん」
「泣くな、グラム」
 大佐から文字通り特訓を身体に刻まれたグラムは訓練を終えていた。
 今はベゼルの代わりに隊を指揮するフランの傍で、ごく安全な任務を実行していたはずだった。
「中央前線崩壊! 敵、来ます」
「弓隊はスパイダーウェブ準備。ソーサラーは続けて、スパークフレア。後に、全軍撤退!」
 形勢は明らかにフラン達の不利に働いていた。
 海辺沿いを通る物資の輸送中、突然海から押し寄せた敵に奇襲を受けた。
 部隊が横殴りに押される中、隊形を整えたものの。徐々に陸地に後退していた。
 そして隊の前線は完全に崩壊し、残りの者は蜘蛛の子散すように逃げ出した。
 けれど、場所は大半をネツァワル国は所有するビクトリオン大陸。そのため逃げ帰る拠点には困らなかった。
 もちろん、普通の方向感覚ならばである。

 眼前には二種類の薄青い情景が水平線の向こうに伸びていた。
「海は広いですね~」
「・・・ ・・・それ以上言ったら、泣いてやる」
 陸地方向に逃げおおせたとばかり思っていたフランは、真逆の海辺にいた。
 あいかわらず天才的な方向音痴をおしみなく発揮している。
「海風の逆に行ったのに・・・ ・・・」
「あの、フランさん? ここは山から吹き降ろす風の方が強いんですよ?」
 的確な説明を受けるフランは「うー」とだけ唸って、何も言い返せなかった。
 幸いまだ追撃を続けているのか。敵兵の姿は見えず。その上、彼女達が隠れている場所は高い草が多く。遠目で見つけられることはまず無い。
「味方が近くにいれば、どうにかなるのに」
 フランはマフラーに顔を沈めて考え込み。隣のグラムは何やら思いついたらしく、隅でコソコソと動いていた。
 その一連の行動とは、乾いた草を集め、空気の通りが良いように積み上げる。最後に剣を振ってブレイズスラッシュを放ち、着火。
「フランさん! フランさん!!」
「何」
 振り返ったフランは当然、絶望的に驚いた。
「こうやって狼煙を上げればきっと味方が気付いてくれるはずです」
「この、天然少女!」
 フランはスカウトらしい素早い動きで焚き火を一蹴。
 だが飛んだ焚き火の一部が火種となり。草の群生に火が放たれた。
 それを見て、二人は慌てた。
「た、大変です!」
「逃げるしか、ない」
 二人は踵を返し、まだ燃えていない草むらから外に飛び出して難を逃れた。
 しかし、更なる一難が外で待っていた。
「火遊びは危険だな。小僧の相棒」
 茂みから脱出した二人を待っていたのは、相変わらず大柄と包帯の目立つヴァンであった。
「敵に居場所を教えるとは、とんでもない馬鹿者が紛れ込んでいるようだな」
 フランの後ろに隠れているグラムは申し訳なさそうに俯いた。
「そんな馬鹿を、見逃してくれたら嬉しいけど」
 フランは腰から短剣を抜き、構えた。けれども戦うつもりなど微塵も無い。なぜならば彼女は、一度ヴァンと戦って負けている。
 その理由を抜きにしても、戦うことにメリットなど無い。
「はいそうですか。などと言うと思うか、小娘」
「私の名は、フラン。小娘言うな。まるで私が未熟者みたいになる」
「みたいではなく、ただ事実を言っている。それに、小娘も俺の名を知らんだろう? 教えるつもりはないがな」
 一度名乗ったため、大佐はヴァンの名前を知っている。一方、居合わせたフランは気を失って名前など知る由もない。
 それは首都で休んでいるベゼルとて同じであった。
「貴方の名前なんて、興味ない」
 言うや否や、ヴァイドダークネスの技で視界を奪おうと接近した。
「奇襲に不意打ち、闇討ち、その他全ては通じない。卑劣な技で我は殺せぬ」
 ヴァンは人並みはずれた速度で鎌を回転させ、技を四散させた。
 そのまま反則級のスピードを乗せ、足元に落下した。
 落ちた鎌はフランを風圧で突き飛ばし、茂みの中に突き飛ばした。
 そしてグラムは、ヴァンの前に肉薄した。
「―――グラムか」
 ヴァンは顔を覗き込み、彼女の名を呼んだ。
 見知らぬ者に名前を呼ばれたグラムは驚き、慌てた。
 それでも大佐の特訓のおかげか、身体は危機感を感じ自然と夕張を握り締め、突き出した。
 ヴァンはグラムを見つめたまま、邪魔な刀を素手で捕らえた。
「こ、この―――」
 足でヴァンの身体を蹴飛ばそうとしたグラムは、刀に滴が落ちているのに気がついた。
 滴は血のように赤い液体ではなく。ヴァンの紅い目元から零れ落ちる淡い湖水のような滴だった。
「お前は我を知っている。我はお前を知っている・・・ ・・・、我が誰かをお前は分かるはずだ。愛しき者よ」
「!?」
 グラムは眼を丸くして驚いた。目の前にいるこの男、いやこの敵は何故自分に親しき言葉をかけるのかを。
 グラムは自分の記憶を呼び起こすが男が誰であるか分からない。その間に、茂みから飛び出す小柄な体躯があった。フランである。
 フランは飛び出し様に再びヴァイドダークネスを放った。
 今度はヴァンの不意を衝いたため、ヴァンの眼が眩み顔を抑えて後ずさりした。
「逃げるよ」
「ま、待ってください」
 技を喰らわせ隙ができたのを確認してフランはグラムの手を引いた。
 ところが全く動こうとしないグラムにフランは業を煮やし、無理矢理に引きずった。
 引きずられるグラムは自分から離れていくヴァンに向かって叫んだ。
「貴方は・・・ ・・・、誰なのですか」
 ヴァンは答えず、フランは見向きもせず、二人のネツァワル兵は戦線から離脱した。

あとがき
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by inuis31 | 2007-05-12 20:15 | 小説
 約二ヶ月ぶりに、この前のあとがきの予告どおり? FEZにカンフー装備を取りに行ったチスターです(爆

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 いやーけっこうにあうなー(棒読み
 え? 受験終るまで禁止じゃ無かったって? そんな事俺が知r(マ、マテ.ハヤマルナ・・・ギャー
 すいません本当にスイマセン。でも、雑誌買ったからには手に入れたいんですよ orz

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 ま、待て早まるな・・・ギャー。ゆ、許してー。
 と、言う訳で折角なので一戦して来ました。もちろんお忍びで・・・ばれぬように・・・特に顔見知りに見つからぬように・・・

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 (チャットに注目)
 !!!!!!!!(゜д゜)!!!!!!!
 お、落ち着け俺。戦闘中に早々見つけられるもんじゃない。ここは冷静に――

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 ・・・ ・・・
 あー、見つかっちゃったー(棒読み)
 流石は雌株教団サーチ力は抜群だぜ! って言うより、常時ハイドサーチする戦場で真正面に立てばそりゃ見つかるかwww

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 オマケ1 初めてATの上に乗ったよ~byジャイ

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 オマケ2 必死に言い訳しながら逃げるチスターの図


 ・・・ ・・・
 また会いましょう (´・∞・`)





 でも、久しぶりにDOGメンバーに会えてよかったな~
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by inuis31 | 2007-05-04 17:37 | ファンタジーアース ゼロ

復讐と鬣のロンド 五

 五話 戦いの火は消えて・・・


 目の前が眩しかった。
 頭が覚醒したベゼルは窓の向こうから差し込む朝日を手で遮った。
 しばらくすると、周りの明るさにも慣れ徐々に視界がはっきりしてきた。
 明るさに慣れて完全に眼を開けると、そこは馴染みの深い自分の部屋であった。
「戦いはどうなったんだ・・・ ・・・」
 気を失う前にいた場所との違いに動揺したベゼルはシーツの中で身体を動かし、半身を起こそうとした。
 だが身体が痛い。全身からこみ上げる様々な痛みでベゼルは再びベットに横たわった。
 よく見ると、ベゼルの上半身には綺麗とは言えない状態で包帯が巻かれていた。ベゼルが動いた拍子に傷口が開いたらしく、白い包帯に血がにじんでいた。
 怪我は確かに痛かった。しかし、メルファリア人の回復力は伊達ではない。
 そんなに時間は経たず痛みが引き、弱い足取りであるが歩けた。
 部屋中をヨタヨタ歩きながら、ベゼルは体力を回復するために食料を探し始め。戸棚をあさった。
「こんな時に限って品切れか。腹が減ったなぁ」
 ベゼルが落胆していると、唐突に部屋のドアが軽く叩かれた。
「はいはい。誰だ―――」
 扉に歩み寄り開けると、そこにはネツァワルの王女。エリスが遠慮深げに立っていた。
「お、王女様。この度は何の御用事で」
 条件反射のごとく、ベゼルは肩膝をついた。急な動きで傷口が悲鳴を上げるが構わなかった。
 国民の大半は王女エリスに対して普通に接する事が多い。けれどもベゼルは意外に真面目なので、丁寧かつ礼儀正しく接していた。
「そんなに堅くならなくてもいいよー。傷をいためちゃうよ」
「いえ、自分の事はお気になさらずとも結構。エリス様、重ね重ね申し上げますがご用件は何でございますか」
 ベゼルは相変わらず小柄なエリスよりも身体を下げ、顔を伏せていると。真上で黒い影が揺れた。
「用事があるのは、私」
 突然強い殺気に近いものを感じ。ベゼルは身体を丸めて後ろに転がった。遅れて先ほどまで身体があった場所を短剣が的確に凪いだ。
「・・・ ・・・ちっ」
「何が『ちっ』だ! 俺を殺す気かお前は!! 天然ステルス機能発揮してるから気付くの遅れただけじゃねぇーか」
 エリスの後ろに立っていたのはフランだった。フランの格好はベゼルのように頭や身体を包帯で巻いていた。
 そして、手には手頃な小ささの果物ナイフが握られ、鍛錬を積んだ研ぎ澄まされた動きで揺れている。
「別に、ただ衝動的にお茶目な衝動に、駆られただけ」
「遊びで生死の寸劇を起こすな!」
 お互いに気を緩めぬ間合いを取り、油断なく構えを決めた。本当に単なる遊びで生死の遊戯を始めようとした時、エリスが二人の間に割って入った。
「止めようよ! けんかはだめだよ。私はただべぜるのおみまいに来ただけなんだよ。ふらんがどーしても一緒にって。あれ? どーしてふらんが怖い顔してこっち見てるの? とっても怖いよ」
 何やら言ってはいけないことを口走ったらしいエリスは、フランに酷く睨まれた。だが睨んでいるフランは実際の所、恥ずかしさで顔を紅く染めていた。
「ああ、そうか。ありがとうなフラン。そうならそうと言えよ。恥ずかしがる必要は―――」
 喋っている途中のベゼルに、振り向き様のフランのビンタが頬に炸裂した。
「痛て、何するんだ・・・ ・・・って。止めろ止めろ、もう殴る―――」
 そのままフランは一通りベゼルを叩き続けた後、顔を染めたままエリスの手を引いて部屋から立ち去ってしまった。
 その去り際に、皮の向けたリンゴが傍の机に置かれた。
 ベゼルは何気なく残された不恰好なリンゴを手にすると、何も言わずに噛り付いた。
「う、あ。口に、滲みる」
 口の中の傷に滲みる果汁で顔をしかめたベゼルは、それでも芯の周りまでも丁寧に食べつくした。
 食べつくした後、何気なく新鮮な空気が吸いたい為に窓に近づいた。
 窓からは禿げた山脈と澄んだ川が流れ、その手前には訓練場が存在していた。
 ふと見てみると、訓練場に顔見知りの人物がこちらを見ていた。
「むぅ。ベゼルよ、身体の調子はどうかの」
 居たのはカール大佐と、小脇でぐったりしているグラムだった。
 何故か声をかけると同時に鍛え上げた肉体を満遍なく見せるが如く。数々のマッスルポーズを見せ付けてきた。
「見よ! この巨体から繰り出される肉体美を!!」
 ベゼルはさらりと大佐を無視してグラムの方に視線を移した。
 彼女とは先日の戦場でいささか気まずい分かれ方をしたのだが。今のグラムはそんな小さな揉め事がどうでも良くなるほど切羽詰っていた。
「ベゼルさん助けてくださーい!」
 全身にすり傷や打撲、かすり傷などを受けているが全て軽い。それでも、グラムの疲労は顔を見ただけで分かるほど青くなっていた。
「大佐。何してるんですか」
「むぅ。今ここで根性の無い新兵に戦いの厳しさと辛さをその肉体に刻み込んでいるのだ」
「嫌ぁー。その表現セクハラですよー。助けてー」
 グラムは悲痛な叫び声を上げ、あまりの特訓の厳しさに泣いているようであった。
「ああ、頑張ってくださいね。大佐」
 結局、グラムはたった一言であっさりと突き放された。
「むぅ。もちろんだ。このワシが一肌脱ぐからには、必ずや一人前の兵士にしてみせてやろう!」
「嫌ぁー。それ以上脱いだら犯罪ですよー」
 可哀想なグラムは誰にも助けてもらえず、大佐の太い上腕筋によって引きずられようとしていた。
 その時、ベゼルは何を思ったのだろうか。少なくともグラムを助ける気は微塵もなかったであろう。
「大佐。頼みたい事があるんですが」
 ベゼルは大佐を呼び止めた、
「錬金術師のアンさんに、最近行われた錬金術の資料を見せてくれるように頼みたいんですよ。できれば、今すぐに」
「むぅ。身体が治るまでは何もせぬ方が良いのだが・・・、うむ。いいだろう。しかし、あまり努めすぎるではないぞ」
 そう言うと大佐は振り返り、「さぁ訓練の続きだ」と叱咤しようとしたがグラムは忽然といなくなったいた。否、逃げていた。
「むぅ。グラムよどこに行った? さては迷子だな! これは大変だ探さなくては。それではベゼルよ、また後で会おう」
 手を振った後、大佐は猛然と駆け出した。
 最後に見えたのは大量の砂塵と巨体を揺らす姿が遠くに見えただけであった。
 しばらく、ベゼルは崖下に流れる川のせせらぎ、通りすがりの渡鳥のさえずり、広場ではしゃぐ子供達の声を聞いてから、
「今日も平和だな」
 とベゼルは呟いて、寒い空気を締め出してからベットの中に潜り込んだ。
 後になって、皆無事であった事に気付くのだが・・・ ・・・。
 今は寝てしまった。

あとがき
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by inuis31 | 2007-05-01 22:09 | 小説