小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド 八


 八話 昔とバナナ


「終わった・・・」
 窓から差す朝日が顔を覗かした頃、ベゼルは重く厚い本を閉じて一息ついた。
 大佐が頼んだとおり、錬金術師のアンは快くベゼルに書物と資料を提供してくれた。
 渡された本は基本的な「錬金術の本」から「近年行われた錬金術の成功例と考察」のようなマニアックな資料まで、幅広く用意してくれた。
 おかげでベゼルは昼夜をかけ、全てに眼を通す羽目になった。
「ったく。何で俺がたった敵兵一人の為に苦労しなくちゃならないんだよ」
 ベゼルは睡眠不足のためか、本に当り散らした。
 放られた一冊の本は、山積みされた本の一角に当たり、崩れた。
「・・・ ・・・」
 そのまま、跡形も無く微塵に切り裂こうか。と思ったが、アンの持ち物なので丁寧に積みなおす事にした。
 なぜならばメイド服で好評なアンは、隠れた噂によると中身は漢であるからだ。裏づけされるように、彼女の口調は男口調。服を纏った二の腕は張り裂けんばかりに太い。
 したがって、怒ると怖い。
 地面にしゃがみこんで本を積み直すと、ベゼルの後ろで微かに扉の閉まる音が聞えた。振り向くと、扉の傍にあるテーブルに食事が置かれていた。
「あいつ。またコソコソと・・・、隠れる必要あるのか」
 あいつ、と言うのはフランのことである。彼女は最近部屋に引き篭もりがちなベゼルの為に、わざわざ食事を持って来ている。
 だが、何故か何時も短剣スカウト特有の常時ハイドで姿を見せない。
 エリスに聞くところ、
「ふらんはきっと、はずかしーんだよ」
 と、お言葉を賜った。
 そう言われても、ベゼルでは言葉の意味を捉え切れなかった。
 大体フランは幼い頃から深い仲。敬遠される筋合いは無い。その仲は思い出すだけで腹が立つほどだ。
 例えば、子供の頃初めてベインワットに訪れた時。緊張していたベゼルの第一歩を落とし穴で沈めた奴がいた。無論フランである。
 他にも度々弄られた昔話が数え切れぬほどある。
 ―――あー、なんだかムカついてきた。
 ベゼルは心の中で悪態をついた。そして、彼女が今の様に変わった原因の出来事を思い出した。

 当時、ベゼルとフランの両人は大佐の下でお世話になり。それでも、まだ十歳に届かぬ年の頃だった。
「待てー、待て待てー!」
「こっち来るな! こっち見るな!!」
 首都から離れたビクトリオン大陸南に位置する草原。雑木林も多く、自然に恵まれた場所。
 幼きベゼルとフランは、豊かな自然の中を駆け抜けている。どっちかと言うと、かなり一方的に・・・。
「待てー。私が覚えたヴァイパーバイトの、実験台になれー」
「兵士になる前に死にたくない!」
 何故そのような大陸の端にいるのかは、育ての親でもあるカール大佐の任務があるからだ。
 任務といっても、カセドリア国と取引をするものである。
 ネツァワルの上等な武具と、カセドリア国の新鮮な食材を交換する。敵同士であるものの、互いに必要な品物の交換である。
 話は戻って、フランは逃げるベゼルを追いかける。
「待てー!」
 ベゼルが一瞬振り向くと、フランは既に短剣を抜いて振り回している。非常に危険なのでやめて欲しいと心の底から思った。
 ジグザグに逃げるベゼルに対して、追撃するごとく背中の向こうでヴァイパーバイトが煌いている。
「もうダメ・・・ ・・・」
 足をもつれさせたベゼルは倒れこむように、その場で止まった。
 ところが更に遠くに標的がいる事を見越した短剣は、ベゼルを飛び越し頭上を越えた。
 後は何も捉えず地面に刺さるか、虚空を切り裂くと思われた。しかし、『ザクリ』という肉を引き裂く音が聞えてきた。
 不審な音を聞きつけて、ベゼルが顔を上げる。その横をフランは必死の形相をしながら通り過ぎた。
「やばい、逃げろ。ベゼル」
 ふとフランの後ろを見ると、赤い皮膚を纏い羽の生えた爬虫類が四足歩行で這いずってくる。
 リザードフライである。
 身体の一部が傷付けられ、どうやら怒っているらしい。
 ベゼルは素早く立ち上がり、踵を返しフランを追いかけるよう逃げ出した。だが、体力は限界で思うように動かない。
「ぶぇ」
 その時、フランが短い草に足を取られ顔面から倒れこんだ。
 もし、この時フランを囮にすれば逃げられるのではないか。という打算がベゼルの脳裏に過ぎった。
 フランのベゼルに対する仕打ちを考えれば、妥当な選択であった。
 けれどもベゼルの中で葛藤が起こった。人を守る兵士になる者として、味方を見捨てる事は正しいのか・・・と。
 二つの気持ちに迷いながら、ベゼルは倒れたフランのすぐ傍を通ろうとした。
 一瞬、助けを求める悲しい瞳と眼が合った。
 ベゼルはそのまま走り過ぎた。そして足を踏み締め、拒む恐怖を無視して逆方向に進んだ。
「守れる者を守れないで、何が兵士だ! 何がネツァワルの兵だ! 俺は見捨てねぇぞ。かかってこいモンスター!」
 怯えた顔で声を張り裂け、ベゼルはリザードフライとフランの目の前にとび出した。
 短剣にも劣る貧弱な剣を両手で握り締め。勇敢にもリザードフライを睨み返した。
「ガァァァー!」
 鋭く唸りを上げるリザードフライは口の中に燻る火を溜め、灼熱の炎を浴びせようとした。
 すると、突然リザードフライの側面に無数の矢が突き立てられた。
 そのままリザードフライは驚きで眼を丸くして、絶命した。
「危ないところでしたね」
 その声は年若い少女の声であった。
 矢の飛んできた方向を見ると、弓を携える中年の男性とたおやかな少女がいた。
 少女の方は細身でブロンドの髪を持ち、神聖な雰囲気が感じられ、年は幼いベゼルよりも上である。
 後で分かった事だが、傭兵将軍ウィンビーンと聖王女ティファリスである。
 ウィンビーンは倒れたフランを抱き起こすと、擦り剥いた傷を介抱したり、カセドリア名産の黄色い果物を与えていた。
「怪我はありませんか?」
 介抱されるフランを見ていたベゼルに、ティファリスは近づいた。
「大丈夫です。僕とフランを助けてくださって、ありがとうございました」
「そのお礼はウィンビーンに言ってやってください」
 ティファリスは更に近づき、落ち込んだ様子のベゼルを優しくなでた。
「貴方は勇敢で優しいのですね。まるでウィンビーンを見ていたようでした」
「僕はあの人のように強くない・・・ ・・・」
 ベゼルは俯いた。
 もし、ウィンビーンの助けが無ければベゼルは死んでいるだろうし、フランを守る事さえできなかったであろう。
 それを考えると、ベゼルは自分の不甲斐なさに苛立ちを感じずにいられない。
 その時、ティファリスはベゼルと視線を合わすようにしゃがみこんだ。
「今は良いのです。大切な人を守ろうとする気持ちは、貴方を強くするのです。自分に諦めず、心を強く持つのです」
 そう言われると、ベゼルの気分は幾らか楽になった。
 その後、王女達と別れて、自分は強くなってみせると約束したベゼル。約束は今のところ及第点である。
 ティファリスが言っていた「大切な人を守ろうとする気持ち」は未だに分からない。
 ただ、フランの眼を見た瞬間に得た。心が熱くなるあの感情は似た意味を持つのだろうか。
 しばらくして、昔を思い出すことに疲れ。ベゼルはそのまま布団に潜り込み、寝てしまった。

「ごめんなさい」
 暗闇の中で、滴の落ちる小さな音が響いた。
「皆、ごめんなさい」
 また同じ謝罪を、誰とも知らずにその場で呟く。
「私には、使命があるから。やるべき事があるから」
 女性らしき者は小さな誰かを持ち上げると、暗闇の中を歩いた。
「兄さん。これで良いのですね。私達が再び元の生活を取り返すためには・・・ ・・・」
 女性は静かに窓を開いた。
「本当にごめんなさい」
 窓は小さく音を立て閉じられた。誰にも聞かれず、誰にも知られずに。





 文字が大きく見えるので、何となくスキン変更。

「バナナ」
 その名を思い出すもオゾマシク、バナナはおやつに入りません。などと言う不可思議な法則を持つ南米の果物。

 などと言っている自分がいたw
 こんばんは、日曜日更新と言いながらスルーした名を名乗る権利の無いチスターです(ォイ
 自分はバナナに因縁があります。深く言えば、トラウマです。
 中学生の修学旅行。バスの中の朝食にバナナなんぞを持ち込んでしまった自分は、バナナの皮を放置し、腐らせてしまった。
 おかげで「バナナ」と馬鹿にされ、一年ほどバナナが口にできませんでした。(これホント
 そういえば、自分のあだ名に食べ物系が多いな~と思う今日この頃。

 さて、今回の昔とバナナ。長くなってしまってスイマセン。いつもよりも五百字以上も多いです。
 元々はベゼルとフランのじゃれあいらしき物を書いていましたが、如何せん。最悪な出来に・・・。
 時間的に余裕も無いので、今頃ですw
 さて、物語もいよいよ終盤。お楽しみに~。


 次回は日曜b・・・・・(グf
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by inuis31 | 2007-05-25 00:08 | 小説