小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド 三

 三話 戦争の宴、前半


 見上げる高さの雲は気の向くままに浮かび、その間からは淀みの無い青空が見える。
 鳥が飛び、風がささやき、時間はゆったりと流れている。
 しかし地上では、空と対極であるような残虐な光景が広がっている。
 真紅の血が舞い、鉄の刃が踊り、戦場を覆う戦塵が充満している。
 場所は乙の字型をした崖の上、唯一無二の前線がぶつかり合い。激しい戦火が上がっている。
 だが崖の下は至って平穏で、暇そうなグラムの顔が見られた。彼女はマネージャーを通じ、既に新兵として戦場にいた。
「私達は戦わなくていいのですか。ベゼルさん」
「良いんだよ。これも作戦と役割の一つだ」
 グラムの隣には、若干眠そうな顔をしたベゼルがクリスタルの近くで腰掛けていた。
 戦争の方はと言うと、相変わらず押したり引いたりの決定打の無い駆け引きが起こるばかりであった。
 もちろん。それは崖上で行われている戦いのみのことである。
「例えば、崖下に降りてくる兵を少しづつ始末したり、オベリスク破壊や建設を目的とした一団の進行を阻止または遅らせたり。一番はやはりキマイラの足止めだろうな」
 つまり、暇ながらも重要な拠点であるのだった。
 グラムは聞いた後、健全たる顔で、
「よく分かりません!」
 言い切った。
「・・・ ・・・」
 これ以上説明する事も、説明の仕方を考えるのも面倒であったベゼルは問いを無視した。
 視線を逸らし、適当に動き回る眼球は、前線から押し出されるように落ちてくる女の兵士を捉えた。身形からして敵兵のようだ。
「短剣オンリーのスカウトみたいだな。距離とブレイク技に気をつければ大丈夫だろう」
 ベゼルは腰をあげ、手を叩いて土を払った。
 それは別に、戦いを始める準備などでは無く。単なる自然な動作であった。
「良し、行ってこい。グラム」
「ええ!? 何で私なんですか!」
 文句を言うグラムに眠そうで面倒臭そうな顔が振り返った。
「いいから行ってこい。実力試験だ。そして命令だ!」
「うわ、権力の横暴反対!」
 そう言いながらもベゼルは上官。グラムは部下。命令を逆らうと後が怖いので、グラムは歩を進めた。
 しかし、途中で止めた。
「行って何をすればいいのですか?」
 ベゼルは問うグラムに対して、不可思議な物でも見るような顔をした。
「決まってるだろう。殺すか、または死なない程度に痛めつけて捕虜にするかだ。だがな、捕虜なんて降参した相手ぐらいじゃないと無理だな」
 ベゼルは言い終わらないうちにグラムの背中を突き飛ばした。
「ほら、行け」
 心の準備も無く押された背中はよろめき、背中から地面に落ちて転がっていった。しばらくして、止まった。
 当然、敵のスカウトはグラムに気付き、視線を向けた。
「あ・・・あの」
 立ち上がったグラムは何故だか敵に剣を向けず、女のスカウトに声をかけた。もちろん相手は返事をしなかった。
 代わりに、素早く距離を詰めると両手の短剣を回転させ、グラムに切りかかって来た。
 グラムは突然の動きに辛うじて反応し、間抜けな格好で横に転がった。
「何するんですか!」
 戦場では当たり前の行動に、グラムは驚き叫んだ。それをベゼルは呆れた顔で眺めていた。
「おいおい。戦う気あるのか? 敵はハイドで姿消してるぞ」
 その言葉に、グラムは周囲を見回した。傍には攻撃を仕掛けてきたスカウトがおらず、グラムは完全に敵を見失っていた。
 未だ姿を発見できないグラムの後ろから、ハイドのスカウトはゆっくり近づいた。そして、素早い動作で跳びあがり短剣を振りかざした。
 しかし、更にスカウトの後ろには気配を見せずに移動していたベゼルがいた。
「おら!」
 振り上げた盾を渾身の力でぶつけ、スカウトは身体をくの字に曲げながらグラムの頭上を越えた。
「あまり調子に乗るなよ。それにしても、ハイドサーチもできないのか。グラム」
 グラムは恥ずかしそうに頭を掻いた。同時に吹き飛ばされていたスカウトが地面に強く叩きつけられた。
 スカウトは殴られた脇腹を擦りながらも、不時着からしばらく経たずに起き上がりベゼルを睨みつけた。
「そう睨むな。お前とコイツの茶番劇はもう終わりだ」
 急に、ヒュと乾いた音がしたかと思うと、女のスカウトに無数の矢が突き刺さった。
 スカウトは驚きと痛みを堪えながら身体をよじり、上を見た。
 そこには高台から弓を構えた兵士が複数と、ソーサラーの姿が見られた。
 女のスカウトは慌てて逃げ出そうと足を動かした。だが頭上から雷が落とされ、後ろから炎の一撃を喰らい。最後に逃げられないように氷で身体の動きが封じられた。
「留めは俺がやる」
 ベゼルは抜いた剣で後方の味方を制し、女のスカウトに近づいた。
 スカウトは息絶え絶えになりながらも、短剣を振り最後の抵抗を試みていた。
「・・・ ・・・」
 ベゼルは無言のまま剣を振って短剣を飛ばし、返す刃で首を突き刺した。そして、強引に捻って抜いた。
「う・・・ ・・・」
 声さえ出ない女のスカウトの代わりに、グラムは吐き出してしまいそうな呻き声を飲み込んだ。
 ベゼルは首から真紅の血を吹き上げるのを気にも留めず、グラムに振り返った。
「最初は気持ちが悪いだろうけど、そのうち慣れるさ。戦場で死をまともに受け止めると精神持たないぞ」
 ベゼルはグラムを気遣って声をかけた。
「どうしてですか・・・?」
 グラムは下を向いたまま、声を発した。
「人の大切な命を何でそんなに簡単に奪えるんですか!」
 グラムは、本気の顔で怒っていた。
 ベゼルは少し驚いた顔で、しかし漂々とした態度をしていた。
「何言ってんだ。兵士が敵を殺すのは当たり前だ。相手もこちらも国のためや、はたまた大切な何かの為に戦ってるんだ。同じ立場なのに哀れむ必要は在りもしない」
 すんなり言ってのけた後、少し寂しそうな顔をした。
「失った事が無いから言えるんです! そんな理由、私は認めません!!」
「そうか・・・ ・・・」
 ベゼルはゆっくり納得したような顔で頷いた。
「なら去るんだな。臆病な建前を通すお前に、戦場を駈ける資格は無い」
 ベゼルはそのまま後ろを向き、グラムの顔も声にも二度と反応しなかった。

「建前だけじゃ、平和を守る事さえもできないんだ」
 後ろからグラムの反応が消えたのを確認して、ベゼルは立ち止まった。
「けれども、グラムの言う事にも一理あるんだろうなぁ・・・」
 そう思うと、どうしようもなくグラムの言う事は正しく。ベゼルは自問自答に押し潰されそうになった。
 ただ、正しくても現実にならないだけの本当は当たり前に正解である願い。
「それでも俺は、守りたい全ての者の為に戦うしかない」
 諦めなのか決意なのか、どちらにしろ今はそれで良いと結論づけた。
 風が吹き、更に激化する戦いにその身を投じるために、ベゼルは再び歩き出した。
 






 今まで出ていた改稿の分は終わりました。
 一話・二話は前の話よりもそれなりに変えてきますが、今回の三話は内容自体で言えばあまり変えてきません。
 そういえば言うのが遅れましたが、二話の「vengeance」は英語で意味は「復讐する」です。
 一応伏線を色々と混ぜながらかんばっていますが、伏線になっているのか違うのか分かっていなかったりしていますw

 さて、もうすぐ5月1日。DOGデザインの特別装備の配布時期。シリアスナンバーの裏面のご使用上の注意によれば、2007年5月14日のメンテ開始時までに手に入れなければならないそうです・・・。
 流石に、雑誌を買った以上。手に入れたいので、一回きりでインするかもしれません。
 見つけたら、「しょうがないか~」的に許してください ><;
 それでは、次回をお楽しみください。
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by inuis31 | 2007-04-22 17:29 | 小説