小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド 二

二話 木の棺桶


 箱の中には所狭しと敷き詰められた花と、少女がいた。
「・・・ ・・・は?」
 果物や野菜を入れるよりも死体を入れるのに適した。いわゆる棺桶という類の木箱の中に、それはあった。
 当然、開いた当人であるベゼルは驚いた。箱の中にいる少女はと言うと、死んだように、または死んでいて動かなかった。
 聞いただけではまさに王子様と眠り姫。そんな場面ができた原因は、ベゼルとフランが護衛した馬車にあった。

「あんまり品物に触ってくれるなよ」
「そう言われましても・・・、こちらもネツァワルの兵として積荷の検査をしたいのですが」
「うちの商品に怪しい物なんか無いよ! たく、国軍の兵だから送ってやると言ったが好き勝手されちゃ困るよ」
「いえ、こちらは一応護衛のつもりで―――」
「護衛は間に合ってるよ! 迷子さん」
「・・・ ・・・」
 慣れない丁寧語で適当に商人の機嫌を取ろうと思っていたベゼルと、未だに不信感を露にしている商人。
 結局の所、商人に二人が必要の無い場所にいる警備兵、イコール迷子の兵だと看破されてしまい。役には立たないと、馬車の後ろに追いやられてしまっている。
 ついでに言うと、馬車の後ろについて来るゴブリンやオークなどの調教された護衛に厳つい顔で監視されている。
「いや、やはり荷物の検査は兵士の務めだと・・・」
「商品に傷を付けたらアンタに請求するよ!」
「・・・いや、それは勘弁」
 汚名挽回とまで言わないが、兵士としての威厳を保つため任務に励もうと思うのだが。商人らしい言い返しに阻まれているのが現状であった。
 ベゼルは触らないで荷物を見回すと、エルソードで獲れる魚介類の干物やカセドリアで採られる珍しい果物類にホルディンの農民が作った新鮮な野菜までもあった。
 どれも食料のほとんどを他の国から来る行商人に頼るネツァワル国行きの商品だった。
 ただその片隅にある変わった形の木箱に違和感を感じたが、調べる事は出来ないので止めた。
 それにしても、
「眠いなぁ・・・」
 フランに連れられて散々迷い歩かされたベゼルは、体力の限界を感じていつの間にか横で寝ているフランに肩を貸して眠ってしまった。
 ―――それからしばらくして、
「ちょっと兵士さん。着きましたよ」
 愛想の無い声にベゼルは眼を開くと、馬車は既にベインワットの領内に入っていた。
 ちょうど馬車が止まっているのはグレートブリッジの中腹である。
「ああ、どうも送ってくださって」
「金にもならないお礼はどうでもいいよ。あんた兵士なんだろ。ついでだ、この木箱を王様に届けてくれよ」
 言い終わらないうちに商人は木箱と共に二人を馬車の外へ放り出した。
「さ、差出人は!?」
 ベゼルの意向を無視して遠ざかっていく馬車に向かって、精一杯の声で問いをかけた。
「さぁな。確かヴァンとか言ってたよ」
 商人は問いに対して吐き捨てるように答えると、馬車を引きつれ人ごみの中に消えてしまった。
「・・・参ったな」
 届けてくれといわれても一般兵士が王様に謁見する事の難しさは誰にでも理解できる無理な注文である。
 しかし、時々街に顔を出すエリス様ならまた別の話である。
 とりあえず、中身を確認しておこうと思い。ベゼルは箱の蓋に手をかけた。

「・・・ ・・・は?」
 ベゼルはまた呟いた。
 見た所、フランと同い年ぐらいの少女は花と一緒に入っていた。少女は栗色の長い髪を持ち、傍らには細身の刀剣『夕張』があった。
 ベゼルは少女が奴隷や怪しい実験に使うような商品かと思うのだが、身に纏う服装はやけに質が良い。
 ならば何故、どうして箱の中で眠ってベインワットに入って来たのだろうか。
 ただ一つ言える事は、
「これは、不法侵入という奴なのか?」
 その時、走馬灯にこの後の結果がベゼルの頭の中で過ぎった。
 不法侵入を許してしまったベゼルは減給に厳罰、酷ければ階級を下げられる。下手をすれば、少女を拉致するような非道と勘違い。そして退職。
 実際そうなるのか、ならないのか確証は無いけれども、ベゼルは最善の方法で事態を処理する必要があった。
 だが、
「よく寝た~」
 頭を捻って考えていたベゼルを無視して、少女が起き上がる展開が起こってしまった。
 半身を起き上がらせ、眠そうな顔で周りを見る少女とベゼルの眼が合った。
「・・・ ・・・」
「・・・ ・・・」
 一瞬、沈黙が漂った。
「な、名前何て言うんだ?」
 とりあえず周りの視線が少ないといえども、沈黙を守っている訳にはいかず、ベゼルの方が口を開いた。
「グラムです。あなたは?」
「俺はベゼル」
 と、悠長に自己紹介。
「むぅ」
 そんな最中で終にフランが起き上がった。
 フランも半身を起こし、眠そうな顔で周りを見ると傍の二人に眼が合った。
「・・・ ・・・」
「・・・ ・・・」
 再び沈黙が流れた。
「その子、誰?」
 何故か飛んでる小さい虫が落ちてきそうな殺気を放ちながら、フランは訊いた。
 問いかける言葉は驚くほど静かだが、鎮魂歌のように聞こえ逆に怖かった。おそらく、ベゼルが見た走馬灯の後者の理由が怒らせているであろう。
「待て、怖すぎるぞフラン」
「私は至って正常ですよ?」
「口調、変わってるんですが」
 怖い、本当にフランが怖い。ベゼルはフランから距離を離し、橋の瀬戸際まで後退して策を考えていた。
 理由も言えないベゼルに、フランは段々と顔を強張らせていく。ベゼルは色々な意味で「ここまでか!」と思ったのだが、
「あの~・・・、新兵募集はどこでしょうか」
 遠慮深いグラムの言葉がベゼルを救った。
「へ?」
 ベゼルは驚いて、フランは「ああ、そうか。早く言えば、良いのに」と先輩面して、グラムはキョトンとしていて・・・、
 つまり万事が上手くいった。
「私、住む国もなくて難民に近いんです。だから国に仕えたい、と思って」
「そうか。なら、こっちに来て」
「・・・ ・・・ははは、フラン。人を疑うのは良くないぞ!」
「うるさい。一遍、パニっとく?」
「すいません」
 ベゼルとフランとグラムは愉快そうに話しながら、棺桶の傍を離れていった。
 残された棺桶は半分開いたまま、強い風に吹かれ蓋が空中を舞った。
 蓋の裏側に書かれた『Vengeance』の大きな血文字は誰にも読まれず、川の中に落ちて沈んでしまった。






 二話目です。まだ戦闘シーンはナシですw
 ところで、これを張り出す前にシメジ氏の小説を見に行ってきました。(ついでに言うと、シメジ氏は「しめじを食べよう」のブログの人です)
 久しぶりにじっくりと小説(水晶の斧)を読んでみて、改めて質の良さを見せ付けられました。
 特に戦闘・戦争シーンが上手い! 詩的な表現でテンポ良く読めるので、更にその良さが出ていました。
 はっきり言うと、かなりうらやましい。
 こちらの小説はどちらかというと、メインキャラ主体にしているので世界観が楽しめない上、戦闘シーンも一人称になりがちで・・・w
 うーん。何だか自信がなくなってきたぞ(ぇぁぅ
 でも、とりあえずは完結させるので引き続き次回の話をお待ちください。
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by inuis31 | 2007-04-18 01:04 | 小説