小さなミスターがネトゲやリアルで奮闘する御話


by inuis31
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復讐と鬣のロンド

一話 始まりは森の中


 何時間経っただろうか。
 緑色の怪しげな液中で血肉と骨は分解され、魂は行く当ても無く浮遊している。
 異形の肉片と彷徨う魂は、地を這う獣、ひ弱な老人、年端も行かぬ可憐な少女、屈強な男、エトセトラ。
 数千の肉片は一つの肉体に凝結しあい、器を求める魂達は先を争い殺し合う。
 その中で一つだけの魂が生き残り。今、強き肉体と精神を得ている。
 力を得た魂は、脳髄を這いずる怨讐と怨望が成すべき事を囁き出す。
 成すべき事、それはただ一つ―――
 復讐だ。

「とりあえず・・・」
「何?」
「どうすればこんな場所に来れるんだ?」
 男のウォーリアーと女のスカウトがたたずむ場所はうっそうと木々が生い茂る深い森。
 周りは背の高い木が大きく枝を伸ばしているため、暗い。
「当然、歩いたから来れた」
「・・・。一応行っとくが俺たちは痩せた草木の生えた荒野の真ん中にいたんだぜ?」
 おそらく、そう遠くは無いだろうか。
 この二人が元々いた荒野の戦場があり、二人はその場で戦っていたのだが、
「道に迷ったな」
 周囲を一瞥する男の名はベゼル。見た目は年若く、青いクセのある前髪を持つ。
 腕は立つのか、身に付けている防具には年にもよらず。幾千の戦いで受けた無数の傷が目立っていた。
「まぁ、慌てても、しょうがない」
 ベゼルの肩を慰めるかのように叩いたのは、白いツインテールと灰色のマフラーが特徴的な少女だった。
 見た目的な年はベゼルよりも若い。
「言っとくが、迷ったのはお前に責任があるぞ」
「なんで~」
「お前が確信有り気に『こっちだこっちだ』と手を引っ張って敵の僻地に潜り込もうとしたじゃねぇか!」
「ぁ・・・、あれはベゼルも賛成したじゃん」
 フランは気まずそうに明後日の方向を向いた。
「俺の賛否を、お前はその小さな耳で聞いてたのか?」
 ベゼルはおもむろにフランの耳を引っ張ると、フランは逃げるように跳び退いた。
「でも、きっと。あっちに行けば、森から出られる。はず!」
「・・・自信を持って推量系で言うな」
 あえて自己責任の逃避を続けるフランに、ベゼルは言うのも疲れたような顔で頭を掻いた。
 再度周囲を見て、木に登ろうかと思案している時。
 とても唐突に茂みが乾いた音を立て、揺れ動いた。
「・・・ ・・・?」
 ベゼルは訝しげな顔つきで茂みに振り向き、剣と鞘の触れ合う音を極小に抑えながら抜き取った。
 そのまま空中でゆらりと剣を舞わせ、静かに茂みに向けた。
「・・・ ・・・」
 剣をゆっくりと左右に振りながら茂みからの訪問者を待った。けれども何者も顔を出さず、沈黙の時間が続いただけだった。
 それを確認したベゼルは何の躊躇も無く、しかし慎重に茂みの中に顔を入れた。
 顔を入れて、それでも中に何もいないのを確認して、更に奥の茂みの反対側にまで顔を押し入れた。
 すると、そこには盗賊のような被り物と大きな鼻が特徴的な生き物が。
 つまりゴブリンがいた。
 ゴブリンは茂みが動く音に反応してこちらに視線を移そうとしていた。
 音への反応は早かったものの。ベゼルは条件反射で顔を引っ込めたので、ゴブリンは茂みが揺れ動いたようにしか見えていなかった。
「どう?」
 首を引っ込めたベゼルの後ろでフランの小声が聞えたが、返答は返さなかった。
 代わりに、小さめな声と手の動きで素早く状況伝えた。
 それと合わせて、気付かれると厄介なので念のため先に倒していこう。と云う指示も飛ばした。
 指示を受けたフランは無言でうなずき、短剣を逆手に構えた。
 鉄の掠れる音でフランの準備を把握したベゼルは軽く振り上げた手を茂みに向かって前へと振った。
 同時にフランは強く地を蹴って茂みの葉を吹き飛ばし、茂みの向こう側に飛び出した。
 遅れてベゼルも茂みの上を強力な跳躍で跳び越す。
「・・・あ」
 だが目指した場所にゴブリンは居らず、代わりに上品な服を纏った商人が入れ替わっていた。
「あわわわ!」
 着地地点が商人の居場所とずれているベゼルはともかく、フランは急激な状況変化に対応ができるはずも無い。
 突進の勢いを乗せた身体は商人を吹き飛ばし、あろう事か馬車に激突した。
 馬車はミシリ、と重い音を立てフランは頭を抱えながら傍でうずくまった。
「と、盗賊だぁー!」
 商人はよろめきながら立ち上がり、慌てて荷車の上に逃げ込もうとした。当然、急に強盗の様に押しかけられれば誰でもそう思う。
 ベゼルはそこで慌てず荷車の後ろに回りこみ、商人にゆったりとした口調で話しかけた。
「旅の商人様。先ほどの非礼をお詫びします。我々は怪しい者ではありません。今しがたこの付近を警備していた正真正銘のネツァワル国の兵であります。どうか警戒を解いてください」
 ベゼルは証明するかのごとく、肩に刻まれた紋章をさり気なく見せた。
「そ、そうでしたか」
 商人はまだ疑い深い視線を投げかけてくるが、それもしょうがない。
「やれやれ、俺もフランを攻められる性質じゃないな」
 小声で呟くベゼルは雇われたモンスターと共に旅をする商人のキャラバンを見回した。






 題名は、『ふくしゅうとたてがみのロンド』と読みます。題名を考え付いたのは最近ですw
 製作半年? の作品になりましたが、本当は下書きマダ完成していません。(・・;
 最終話がまだ書いてませんw
 一話事態はさほど変わりませんが、昔のより少し長く(2000字弱)、そして楽しめるようにした。・・・・つもりです。
 閲覧者の方々が『復讐と鬣のロンド』を最終話まで読めますように、一生懸命精進していきます。
 どうぞよろしくお願いします。
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by inuis31 | 2007-04-15 21:47 | 小説